ぶらんこ
index|past|will
おじぃちゃん わたしね、おじぃちゃんにあやまりたいって思ってる けどまだできない
おじぃちゃんのところ行くの ほんとうはこわい おじぃちゃんなんにも話さないし どこ見てるかわかんないし それに おじぃちゃんの顔ちがう色になった きいろくなった ちゃいろになった そのうち まっくろになってしまうんだろか
おじぃちゃんのところに行くと おばぁちゃんがよろこぶ おりこうさんだねぇ おじぃちゃんに「ただいま」言っておいでねぇ って お母さんもそうしなさいって言う おじぃちゃんがよろこぶから行っておいで って言う お父さんは黙ってるけれど、きっとおんなじ気持ち だからわたし おじぃちゃんのお部屋に行く
おじぃちゃん わたしが来たら うれしい? 前は ちょっとだけわかってたみたいだったけど いまはもうなんにもわからないみたい どうなんだろ? わたしには わからない
おじぃちゃんは ぜんぜん動かない 看護婦さんが来て からだを拭いたりしたときにだけ あー とか うー とか言う ときどき 痛い っても言う おじぃちゃんは どうしたいんだろう なんにもしゃべらないおじぃちゃんもいやだけど 痛い って言うおじぃちゃんを見るのは もっといやだ でも おじぃちゃんがなにか言うと こころのなかで ほっとする おじぃちゃん 起きたんだな って ほっとする
おじぃちゃんのお部屋に行くと おじぃちゃんの匂いがする それはおじぃちゃんのタバコの匂いじゃなくて 髪の毛につけてたなんとかというくすりの匂いでもなくて 消毒の匂いでもない それはおじぃちゃんの匂い おじぃちゃんが病気になって 病院からおうちに帰ってきて なんにも話さなくなって 食べるものも少なくなって それからの匂い わたしねホントのこと言うと それがちょっと苦手
おじぃちゃん どっか行っちゃうんでしょう まだそこにいるけど 遠いとこへ行っちゃうんでしょう
おじぃちゃんは 死んじゃうんだ
みんななにも言わないけど わたしにはわかる
おじぃちゃん ごめんね おじぃちゃんのこと 大好きなのに
ごめんね おじぃちゃん
|