ふつうのおんな

2005年05月10日(火) 久しぶりの食事は

母が口をおさえた瞬間立ち上がってゴミ箱を差し出した。
まる2日間点滴だけで固形物を口にしていなかった母は3分粥と刻みおかずを少し食べたところで全部吐いた。

食べた分全部。

いまだ常に吐き気が付きまとうため、点滴にしていたのだが抗癌剤をやっていないのに吐き気が続くのが解からない。
担当医も父もわからないという。
血が 汚れているからかもしれない。

一緒に買ってきたパンを食べていたので 母は「ごめんね 汚いもの見せて」ってすまながった。
私は「ぜんぜん」といってまた食べ始めたが 喉を通らなかった。

母の汚物を見たからではなく 母の弱弱しさに泣きそうになったからだ。
私は食べてる振りして殆ど残した。

少しして母はまた食べ始めた。
おかゆとお吸い物のはんぺんとかぼちゃのサラダ。
吐いた分を差し引いても全部食べた。

ほっとした。

だが 昨日父との会話で、家族は母がもう長くないと思っていることを知らされてしまったらしい。
なんでそんなことをっ
「娘と話したいことは今のうちに話しておけ」なんてさー。

まあ あとで後悔しないようにってことなんだろうけどね・・・。

バルーン(尿の出が悪いので小さな風船のようなものを尿道に入れて道を広げ管を通してある)は抜くようすすめたが 担当医は楽ならそのままでいいと言ったという。
それに慣れてしまったら はずしたときにしばらく筋肉の力が戻らなかったら尿漏れで大変だと思ったのだがはずすことはないということなのか?

母の足をお湯で洗い 背中を拭き そんなことを思いながら 唇を強くかんでこらえた。

まだ、母の前で声をあげて泣いたことはない。
妹はこの間家に帰っていたときベッドの母にすがって子供のときのようにわぁわぁと「死んじゃ嫌だ」と大声で繰り返して泣いたという。
それを言いながら母は思い出し泣きする。

だから私は絶対に それはすまい。
最後の最後まで しないよう がんばりたい。

だけど 歩いているとき ひとりでぼんやりしてるとき 発作のように悲しい気持ちがこみ上げてきて涙を押し上げる。
それだけは止めることはできそうにない。

chick me
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etsu

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