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■ スティル・ライフ (本)
スティル・ライフ 池澤 夏樹 中央公論社
スティル・ライフ / ヤー・チャイカ
仕事先で知り合った友人・佐々井。彼はどことなく不思議な雰囲気を持つ、僕の唯一の友人と呼べる青年だった。 その佐々井から、僕は奇妙な事を頼まれる。 株を買って欲しいと言うのだ。 資金や運営などは自分がやる。そのかわり、名義を貸して欲しいのだと……。 まるで詐欺でも働くかのような頼み事だったが、僕は佐々井の静かな人柄を考えてOKする。 株の投資は順調に進んでいるようだったが、僕は特に変化があるわけでもなく、穏やかに静かに暮らしていく……。
数年前、中学の時に初めて読み、数年経ってから読み返して驚いた。『株』という、余りにも俗な名前が出てくることに。 名前を貸すかわりに、投資を倍に増やしていく。 そんな取引があるとは思えないほど、主人公と佐々井の生活はただ静かで穏やかだ。 読んでいるだけで、神秘的なものに触れられる気持ちがする。 洗われる、というのは、こういうことを言うんだろう。 そんな文体の作家さんの、代表作。
『いつも思うのですが、池澤夏樹さんの小説は天体の匂いがします。 天体とは言っても、それは長野まゆみや星々の輝きのように硬質な響きではなく、ごく自然な、春の雨に近い、柔らかなもの。言葉は天文学や科学的な語列を含んでいるのに、果てしなく淡く緩やかな。 文体にも、例にあげられるような特徴がありありと見られる訳でもないのに、読んでいると「ああ、これはこの人にしか書けない文章なんだ」と思う。 そしてそういう人は、その文章とおなじ人柄(と、いうか精神や魂)をしているのかもしれない。』 (以前、日記で書いた文より抜粋)
2004年09月09日(木)
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