2001年01月13日(土) |
澤村宗十郎死去・・・もう見られないのかー。 |
あの品の良い芝居はもう見られないのかー。そう思うと宗十郎の芝居をもっとみておきたかったという思いが胸をこみあげてきた。 12月の日記に歌舞伎座での20世紀最後の歌舞伎鑑賞について書いたが、その歌舞伎座に宗十郎さんも出ていた。2000年12月歌舞伎座夜の部のとりをかざる芝居は「蘭蝶」。澤村家ゆかりの演目であるこの芝居で宗十郎さんは、お家の宝を取り戻すために男芸者に落ちぶれたふりをしている男と、その男の妻という2役を演じていた。 白吉の観劇仲間であるK書店のKさんとこの日の芝居をみに行ったのだが、その時Kさんが宗十郎の芝居を見てこう言ったのだ。 「宗十郎、なんかすごく調子悪そうだねー」 観劇暦4年と、まだにわかファンの域をでない白吉は、その芝居にでていた八十助(=現、三津五郎)に目をうばわれており、宗十郎の調子の良し悪しというものは気づかなかったのであるが、年があけてから歌舞伎座に三津五郎の襲名興行を見に行った時、宗十郎休演の案内に心のざわめきを若干ではあるが感じたのであった。
今から思えば、12月の公演は執念だったのかも知れない。舞台の上で言ったこの言葉が、今となっては重く重く感じられる。 「本日のこの蘭蝶は当家ゆかりの芝居であるのですが、しばらく演じることはなかったのですが、念願かないこうして演じることができ大変嬉しく思っております」
赤字覚悟で古典の復活に勤めた宗十郎。お家の芸、歌舞伎の伝統というものを何より大事にした宗十郎。
その最後の舞台を、執念で演じた蘭蝶を、生で観劇できたことを、大変幸せに思う、この気持ちを宗十郎への追悼の意としたい。
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