鼠小僧白吉のうだうだ日記

2001年03月06日(火) 過激なプロローグ・F1開幕戦豪州GP

21世紀のF1の足音が聞こえた。私にはそんな気にさせる開幕戦だった。

20世紀の最後のF1、90年代の後半のF1はマクラーレンVSフェラーリ、さらに言えばハッキネンVSシューマッハの抗争の歴史だったといっても過言ではないだろう。メルセデスJrチーム同期の二人、かつてのマカオGPからの因縁がF1という最高の舞台までその闘いを昇華させバトルを繰り広げたそんな歴史だった。もちろんそこにはメルセデスエンジンでありマクラーレンというコンストラクターズの作り上げたマシンであり、伝統と栄光に彩とだれたフェラーリのパワーでありと様々な要素が絡み合って成し得た抗争であったわけであるが、あくまで主となる図式はハッキネンVSシューマッハというドライバーの対立構造であったはずだ。そうしてくりひろげられてきたバトルはF1の象徴ともいえるフェラーリに乗ったシューマッハの王座獲得という最高のエピローグでしめ、21世紀という新時代にその闘いを引き継いでいった。
 そしてやってきた21世紀のF1。フェラーリVSマクラーレン、シューマッハVSハッキネンという抗争の基本線は結局のところ変化がなかったわけであるが、はじまったばかりの21世紀、先を見据えた時、十分過ぎるくらいの足音をとどろかせ21世紀のF1がやってきたのだった。
 21世紀のF1、メルマガ、HPで再三記しているように、市場社会で一様の勝利を納めた大自動車メーカーたちが社運をかけて挑む戦い。
 ホンダという日の丸メーカーの足音が、BMWというユニオンジャックのはためく音が、アルバートパークには現状では十分すぎるくらいに轟いたのであった。

 初日金曜のフリー走行でいきなし「ホンダ」がその足音を轟かせた。なんとディフェンデングチャンピオン・フェラーリのミヒャエルシューマッの上をいくタイムをジョーダン・ホンダのヤルノ・トゥルーリがたたき出したのだ。ホンダのこの快進撃は予選でも十二分に発揮される。1・2にフェラーリを置き3番手にマクラーレンのハッキネン、とくれば当然昨年までの流れとして4番手にクルとくるわけであるが4番手にジョーダンホンダはハインツ・ハラルド・フィレンッエンをとびこませることに成功した。7番手にジョーダンホンダ・ヤルノ・トゥルーリが来たかと思えばその後ろ、8番9番とBARホンダがヴィルニューズ・パニスの順でグリットにおさまり、なんと4台ともトップ10圏内におさめたのだ。
 そうなるとBMWもまけてはいられない。ラルフ・シューマッハがミシュランタイヤ勢トップのタイムをマーク。そしてこちらも不動の1・2・3・4の一角を切り開くタイムを叩きだし、クルサードをさらに後ろへ追いやり5番手を奪取。クルサードは結局6番手までおいやられることとなった。

 十二分に表彰台を狙える距離のホンダ勢、そしてウィリアムズもBMWのパワーで久々の表舞台にたてるのか。期待と興奮の思いで幕をあけた豪州GP決勝!
 21世紀の足音をとどろかせてこの週末私たちに期待を与えつづけたホンダとBMWがまさか21世紀最初の惨事をまねこうと誰一人予想しなかっただろう。レース開始5周目の3コーナ、6番手走行のウィリアムズBMW・ラルフ・シューマッハを追いかけていたBARホンダジャック・ビルニューブが接触。ビルニューブのマシンが宙を舞い、そこらじゅうに破片がばらまかれた。その破片によりコースマーシャルの一人が死亡、付近にいた観客七人も重軽傷をおった。昨年のイタリアGPに続く悲劇。ドライバー二人は無傷ですんだのであるが、またしてもレースでの犠牲者がでてしまった。
 スポーツ新聞各紙のようにそのことをセンセーショナルにこの場で書き記すつもりもないがかといってレースに事故はつきものと簡単にわりきれないものもある。特にアメリカで一人の英雄がサーキットに散っっていたあとともなればなおさらだろう。今一つここに書き記せることがるとすれば、この教訓をけっしてないがしろにしてはならない。このことを記しておきたい。
 26周目、今年もマクラーレン・メルセデスに悲劇がおそった。コースを飛び出たマクラーレン・メルセデスのマシンはタイヤバリヤに突っ込んでいった。ミカ・ハッキネンリタイヤ。3年連続開幕戦リタイヤ。ハッキネンは今年も開幕戦でつまずいてしまった。
 さて、もう一台のマクラーレン・メルセデス、デイビット・クルサードはサーキットにいる全ての人をやきもきさせていた。いつまでたってもピットに入っていかない。ようやくピットに入ったのは41周目。ビルニューブとラルフの事故で思ったよりも燃料がもったということであるが、ここまでタイヤがたれずにもったということも驚異。今年からミシュランタイヤの参戦によりタイヤ戦争が勃発。ブリジストンタイヤもオフシーズンの間に驚異の進化を遂げていたのだ。
 クルサードがピットに入る4周前シューマッハがピットイン。シューマッハはここまでずっとトップを走っていた。コースにもどってみると、クルサードが前を走っていたが、クルサードがピットに入ると再びトップに。結局このままシューマッハがトップを快走しつづけ、21世紀最初の勝者という称号もフェラーリ・ミヒャエル・シューマッハが手に入れた。シューマッハは世紀を跨いで5連勝。そう、その連勝がはじまったのはイタリアGP。シューマッハはまたしても「よろこべない」勝利を手に入れることになってしまった。そういえばあの日、1994年5月1日、あの日の勝者もミヒャエル・シューマッハだった。
 マクラーレン・メルセデス、デイビット・クルサードはピットアウト後、危なげない走りで2番手に、3番手にはもう一台のフェラーリルーベンス・バリチェロが入った。
 4番目にチェッカーを受けたのは「ホンダ」、BARホンダのオリビエ・パニスでったが、無念、ラルフとビルニューブの事故の時に黄旗追い越しをしたということでペナルティ25秒をレース後課され7位に降格。同様のペナルティーは9番手に入ったジャンカルロ・フィジケラにも課され、10位に降格された。
 よって公式結果では4位ザウバーペトロナスのニック・ハイドフェルド、5位ジョーダン・ホンダのハインツ・ハラルド・フィレンッェン、そして6位に「仮免」のスーパーライセンンスで参戦、キミ・ライコネンが入りポイントゲット。4輪レース24戦目でF1のポイントを獲得してしまったこの新人は21世紀の伝説を作っていくことになるのだろうか。

 結果、表彰台にあがったのはマクラーレンとフェラーリ。何らそこに新しさを感じさせないかもしれない。金曜・土曜とたからかに21世紀の足音を高鳴らさせたホンダもBMWも決勝レースでは散々であった。ラルフとビルニューブの事故、パニスの降格、モントーヤもエンジントラブルで40周目にリタイヤトゥルーリも38周目エンジントラブル。しかしちゃんと2ポイント、ジョーダンホンダのフィレンツェンが獲得した。次戦以降、徐々にその力を発揮していってくれることだろう。

 21世紀のF1開幕戦。新時代の到来の予告だろうか、足音は確かに聞こえた。少し過激なプロローグであったが、新時代のF1ストーリは今はじまったばかりなのである。


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