朝の通勤通学時間。 夏も終わり朝には冷え込むようになってきたとはいえ、まだたまだ季節は秋である。日が昇ればそれなりに暖かくもなる。 もう1月もたてば吐く息の白さに季節を感じる。そんな時期。 まだ朝早い為か人通りはまばらではあるが、朝の早い生徒たちは眠気マナコをこすりながらトボトボと学校への道を歩いていた。 中間テストまで近い為か、人数こそ少なかったがそれなりの人数がさっきからチラチラといぶかしげな視線を向けてはその直後に反対側路上へと視線を落とす。 見てはいけない物を見た時には人間大げさなくらい真逆の方へと視線をそらすか目を見開いて注視するのはなぜなんだろうか。
一人の少年が、怖い顔をして大通りから学校へ向かう道を逆方向に歩いている。登校してくる生徒たちの群れの中を逆走しているわけである。 怒りながら。
良く言えば注目を集めていると言える、が悪く言えば悪目立ちをしているとしか言い様がない。
(だいたいあいつはムカつくんだよ。)
白い開襟シャツに学生ズボン。短く刈りそろえられた髪の毛は思わず触ってみたくなるように愛らしい。きっと触ればサクサクと心地よいだろう。その年頃の子達と比べてもけして高いと言えない身長に手には剣道の竹刀らしき物を肩に担ぐように持っている。 少年のころ独特のヒョロリとした手足はこれから大人へと変わっていくさまを予兆させる。 顔も、頬にはまだ子供と言ってさしつかえのないほどのふっくらとした愛くるしさがのこっているし、秀でたおでこや大きな目がとても印象的でさえある。 が目の鋭さがそれを邪魔していた。 そう愛らしいと言う表現がまだふさわしいが、彼にはそういう言葉はふさわしくない。 むしろうかつに近くに寄っては怪我ではすまない。 そう本能に訴えかける物をもっていた。 ロロノアゾロと言う少年は。
ゾロはムカムカしながら道路を大股で海の方へとで歩いていく。 ただでさえ強面なのに頭から湯気でも噴出しそうな勢いでズカズカと歩くもんだから周りの誰一人として声をかける事ができない。 もっとも彼に声をかけるほど親しい人間などこの界隈には一人もいないのだが。
(つーか俺の知ったことかよ。全部悪いのあいつじゃねーか)
越境してスポーツ入選枠でこの中学校へと入学したゾロにはまだ友達と呼べる人間が一人もいなかった。 むしろ強くなるためにはそんなものは邪魔で忌むべき存在だった。 学校なんてこないですむならこないで済ませたいが法律で決まっているのだそうだ。中学に行くというのは。 小学校の時にそれを知った時にはとてもショックをうけた事を覚えている。 つーか今でも行かなくて済むなら行きたくないが剣道ばっかりやってていいとか言ったので。きてやってるのだこの中学には。
(あいつぶっ殺す)
人間関係などというつまらないものにかまけている暇などない。 友達などと言うものは弱い連中が寄り集まっているのだ。くだらない。 ゾロはそう思っていた。 つい昨日までは。
(つーかミンチだミンチ)
そしてゾロ自身には今でもそんなものは居ないし必要もないと思っている。 そんなゾロなものだからクラスでは浮きまくっていた。 それもつい昨日までは。
(あいつの泣き顔見たくらいじゃおさまらねぇ)
金色の髪の何とか言う眉毛の巻いたムカつくガキに会わなくては行けない。 なにもかもあいつのせいなのだ。 馬鹿でへんてこりんなひょろっとしたクルクル眉毛の阿呆は。 たしか名前を覚えていたような気がするが。 ムカムカした頭では思い出す事もできない。
朝行ったら剣道着も体操着も両方無くなっていた。 そしてなんだか置手紙が。
[剣道着と体操着を返してほしければ例の海辺へこい。逃げるなよ]
宣戦布告をしたのだ。 このロロノアゾロに。 あの馬鹿眉毛は。
………なーんて浮かんでみたり。 これどうしようかなー。
あたしに文才を期待したらオロカだよ。 ねっ?
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