南盤月記
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境界立会の準備で現場へ。 大昔、そこで水死した者がいたという海辺の池沼。 行きがけに『確認写真に地縛霊とか映りはせんかね?』と冗談混じりに云われたりした。 まぁ、野外の現場写真に木漏れ日とかが心霊写真ふうに映ってるのはよくあることで、とくに気にしたこともないのだが、今回は余計なものが映ってるとそれだけでも嫌だなぁ、などと思う。
現場は山道を数百メートル行った先で自動車などは入れなくなっている。 仕方がないので徒歩で行く。 荒れ放題の山道は藪漕ぎをしていくのとそう変わらず閉口する。
道の途中、雨水がたまって泥濘ができている場所に出た。 カサカサと音がするので見ると大量のカニが群れをなしていた。 3坪くらいの広さのところに甲羅の赤い10センチくらいのカニが地面いっぱいに広がっていた。 近づくといっせいに逃げ散ったが、その様子は地面に皺が寄るように見えるくらいで、なかなか凄いものがあった。
さて、仕事の方はとくに問題もなく終わって、現場写真に地縛霊が写ることもなかったわけだが、後になって、『水死の現場よりも、あの大量のカニのいた場所のほうがよほど怖かったのではないか』と思い直す。
何もない場所にカニが群れているなんてことはないわけで、あの泥濘の下には何かが沈んでいたのではないかと考えたりするのだ。
野中
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