母から受け取った中身が何かなどとうに忘れたけれど古い 懐かしき香のする若草色の風呂敷が押入の奥から 現われた水に浸け 軽く洗う皺にならないように優しく水気をとった掃除も洗濯も一段落してやっと気付くその風呂敷に 私の家名が印されていることに少しずつ この歳になり家元を離れ名前の重みを 感じるようになった不可思議な環境で私は生きてきたのかもしれないふと そんなことを 思った煙草の煙が 目にしみる現実に……引き戻された