巻き寿司。 - 2005年04月13日(水) 昨夜も容赦なく襲う鬱に眠りを奪われ何もできずに夜を過ごした。 明るくなり始めた外から「ブーン。」って走り去る軽いエンジン音。 新聞聞配達のバイク?そうか、そんな時間、もう朝か…… もう世の中はとっくにいつものように動き出す時間。 そんな時間からアタシは起きてる事にも疲れを感じようやくベッドへ。 まだ薄暗い天井を黙ってしばらく見上げてた。寝付けなかったと浅い記憶… 「いってくるよ。」 君の声で目が覚めた。そうか、あれから寝ちゃったんだね私。 「いってらっしゃい。」 さくっと起き上がれるはず等なく、ベッドルームから声を出し送った。 そして、すぐに耳には鍵を掛ける音。ホッした。 だって鍵を掛けなおしにこの重い体を起こさなくて済むもの。 いつもはそのまま出て行ってしまうのに今日は初めて鍵を掛けてってくれた。 そんなささやかな気遣いに嬉しさと、起きれなくてゴメンって罪悪感の混ざったココロ。 そのまま軽く寝たみたい。なんとなく目がさめたら時計は10時半過ぎ。 よろよろと起き上がり洗面。更に、ボーーっとキッチンへ。 小さい銀のトレーにはピンク、白、黄色と3つの粒。 そうか、ちゃんと薬も置いてってくれたんだ。黙ってミネラルと一緒に流し込む。 分かっていたが極端に少ないその量に少々の戸惑い。そして、モノ足りなさと不安感。 「残りの薬は?」無意識にその辺の引き出しを開けて探してしまう私。 ダメだ…。まるで薬物依存みたい。違うのに。典型的な後遺症だ。 飲めば開放されるという錯覚に飲んで消えたちゃいたいというアタシのここの病…。 それから? やれることなんて何も無いよ。今のアタシには。 気紛れになればと耳に当てたヘッドフォンから流れる音はただのノイズ。 お気に入りのオルゴールさえただの錆びたブリキ。 錆びてるのはアタシのココロ。ドクターも何色のオイルをさせばまた鳴り出すのかと試行錯誤。 何色を出されても効果ないのはもう鳴らなくていいと逃げたがるアタシが拒絶してるせい? 何か飲もうと冷蔵庫を開けるとブルーの付箋の付いたパック。 「!?」 付箋にはとても上手とは褒められないすぐ分かる君の丸文字。 「お昼に食べろ」 ぶっきらぼうにそう書かれていたパックの中には4本の色取り取りの巻き寿司。 え?いつ?昨夜も帰宅は遅かったのに。 パックのバーコードの上には見覚えのある駅そばのスーパーの名前。 そしてその上には5割引って黄色いシール。君らしい。 夕べから冷蔵庫に入ってた太巻きは少しもうおコメが冷たく固くなり始めていた。 だけど、だけどね。美味しかった。本当にとてもとても。 そして、そしてね。私、泣けちゃった。 君が黙って用意してくれてたそのランチに、優しさに…もう、せきを切ったように涙が… 泣きながら巻き寿司ほうばったの。 可笑しい?滑稽?いいよ、笑われたって全然かまわない。 私、元気になりたい。久しぶりにそう素直に思った。君のために。 時間は想像以上にかかるかもしれない。 君の心に描いてた家庭や妻の姿は今の私には無いだろうけど。 またぶつかり合ってバカをして困らせて失望もさせるだろうけど。 どうか待っていて。見捨てずにいて。 いつか私の作った巻き寿司を君に食べさせてあげたいから どうか、ずっとずっと、そばにいて。 小雪。 ...
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