|
ボクの庭からクルマで5分くらい走るとトミヤマという町になる。 そこにきれいな桃色の並木があるので、それの写真を撮ろう、とアキコが言った。 「ボクも日記に書くから連れて言ってくれ」と言ったら、ボスは「イヤだ」といじわるを言ったが、アキコがボクも一緒に連れていってくれた。
クルマで坂を上って、下りになるとすぐにきれいな桃色の並木があった。 この並木はコウバイという梅の並木らしい。 そこでアキコとボクはクルマから降りて、並木沿いを散歩した。
コウバイの並木はすごい桃色のかたまりだが、近くで見るとそれぞれの木が違う顔をした花を咲かせている。 花びらが5枚のもの、花びらが豪華なもの、色の濃いもの、薄いもの。 このいろいろなコウバイが重なって、見事な桃色の並木になっていた。 すばらしかった。
それから、ボクはこのコウバイの枝にミノムシも見つけた。 ミノムシは梅の枝で作った丈夫そうな着物を着ていた。 ヤツはときどき顔を出して、見事なコウバイの並木を楽しんでいるに違いない。 とてもいい場所をねぐらに決めたものだ。 ボクの小屋もしばらくの間、ここに置いてほしいくらいである。

|