今日ボクは突然ボスとアキコに抱えられ納屋に連れて行かれた。 連れて行かれた納屋の隅には何かケモノ臭い黒い毛のかたまりがあった。 ボスもアキコも「ゲンゾーがんばれ!」とボクを応援してくれていたが、何を頑張ったら良いのかさっぱりわからなかったので、ボクは頑張って毛のかたまりのニオイを嗅ぎまくった。 ーーーこれが今日の納屋事件でボクがしたすべてである。

ボクが一生懸命ニオイを嗅いだ毛のかたまりはタヌキだったらしい。 ボスもアキコも納屋に入り込んでしまったタヌキに外に出て欲しかったのに、臆病なタヌキが隅に頭を突っ込んだまま動いてくれないので、番犬のボクに何とかしてもらおうとボクを納屋に連れて行ったのだ。
「タヌキを追い払ってくれ」と言ってくれれば良かったのに、ボスもアキコも「タヌキを見た時ボクがどんなことをするのか」ということが楽しみで何も教えてくれなかったのだ。 せっかくボクの格好いいところを見せるチャンスだったのに、失敗なのだ!
結局このタヌキは番犬のボクではなく、ボスが頑張って追い払ったらしい。 ボスもアキコも「ニオイを嗅いだだけだったね」「ワンの一言も無かったね」と言っていたので、ボクは番犬の地位までボスに持っていかれるかとドキドキしたが、二人とも「ゲンゾーは優しい犬だよね」という結論に達していたのでちょっと安心したのだ。
 タヌキは犬の仲間らしい。 アキコが「全然丸顔じゃなくてゲンゾーに似てたよ」と言っていた。
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