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見つめる目 【周期8日目】 - 2004年12月14日(火) 今日電車に乗って一人座っていたら、 男の人が抱っこ紐をして生まれて間もない赤ちゃんを抱えて乗ってきた。 きっと琴よりも若そうなその男の人は、 本当にその赤ちゃんが可愛くてしょうがないといった様子で、 ほっぺを触ったり話し掛けたりしていた。 平日の昼間だし、お父さんだし、珍しい気がして、 なんとなく目を向けていると、その親子は私の横に座った。 するとその赤ちゃんは「じぃぃぃぃ〜〜〜」 っと私の顔をひたすら見つめるのである。 あまりにまっすぐな視線で、私も思わず微笑みながら見つめてしまった。 「なんて白目が青いんだろう、なんてお肌が綺麗なんだろう、 なんて小さいんだろう・・・」 そんな事を思いながら見つめていて、ハッとした。 私は、今この小さな生命が誕生する事を切に願って治療をしているわけだけど、 不思議な事に、その現在の目標、もっとも私が今願っている「妊娠」の先に、 この小さな生き物を育てていくと言う事が、頭では漠然とわかっていても、 具体的に目の前にした赤ちゃんと照らし合わせると、 ちっとも結びついていない事に気が付いたのだ。 今の努力の先に、この私をじっと見つめている赤ちゃんを 24時間育てる事になるんだ。 そんな分かりきった事が、いまいち結びつかないで戸惑う自分に驚き、 そして不安にもなった。 いやでも・・・もしかしたら、そんなものなのかもしれないな。 もしも自然妊娠だったなら、始めは自分が妊娠した事にも気づかず、 そして次第にお腹が大きくなるにつれ、 徐々に具体的に心の準備ができるものなのかもしれない。 この治療をしていると、事前に色々なことを考えすぎる。 その割には、成功して無事出産したなら、 自分が赤ちゃんを育てて行くということが、いまいちピンと来ない。 もしかしたら、自己防衛で想像しないようにしているのだろうか。 もし生涯できなかったら、一杯期待した分だけ自分が傷つきそうだから? そんなんじゃー、生まれてくる赤ちゃんがかわいそうだよなぁ。 そして着床するまでを目標にしたりするんじゃなくて、 もっと期待してあげて、その先のことまでもっと普段から イメージして楽しみにしてみたいなぁ。 そんな風におもいながら、もう一度その赤ちゃんを見て見ると、 冬のお昼ののどかな日差しを浴びて、眩しそうに目を細めた。 「こんなに小さいのに、眩しそうな表情をしたりするんだなぁ・・・ よくできてるなぁ・・・不思議な生き物だ」 っとやっぱり全然具体的にイメージできないまま、電車を降りた。 ...
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