ことばとこたまてばこ
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1970年01月13日(火) 膣は土

今おれは地面に這いつくばっている。
皮膚に土が染みこむんじゃないかってくらい強く地面に頬ずりをし続けている。
縄張りを荒らされて怒った蟻がふくらはぎ、首筋、関節と肉の柔らかい部分に噛みつく。
鼻の穴に土が入り込み、濃厚な土の匂いがじんじん体中に横溢する。
悶えるおれの動きにより、ばさばさと草が揺れテントウムシが迷惑そうに羽ばたき離れた。
口内も土にまみれ、にがくて冷たい味がじんじん蔓延する。
栄養過多と思われるのっぽの向日葵が咲き乱れてその中心にうずくまるおれを見下ろしている。
土は信じられないほど濃厚にクソまずい。あまりにもひどくて涙が出てくる。


ちくしょうえらくドまずいぜ。


おれは地面から這いつくばったまま頭上を仰いだ。
たっぷりとした頭巾雲を従えた突き抜けた青空が見える。
しかし今のおれにとって空はあまりにも遠い存在であり何も見えない。
見ることが適うは微生物がひしめく焦げ茶色の土のみ。
幾星霜もの間、無数の死をめとってきた母性の土。


その味はちくしょうえらくドまずいぜ。


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