ことばとこたまてばこ
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盲目の翁 濁った眼 うろんに泳がせて 樹海の中ひしめく木々の根に 翁は七度転び 八度立ち上がった 目印となりうるわずかな明かりも辞さぬ 暗闇 白杖は 三度目にけつまずいた時 とうになくしたよ
盲目の翁へ 奇跡は尻をふって訪れた 幾星霜も前に朽ち果てた巨樹なれど ふところは万種を受け入れる空洞 穏やかな生物が集まり 雨は防げ 水絶えることなく 豊穣な果実までがあった
盲目の翁 濁った眼 うろんに泳がせて 生物をひとなでして ぬくもり忘れておらぬ事を再確認 雨に濡れぬ幸福を 至極幸福ことだと再確認 清流にて喉をしめらせ 自分が水の塊だということを再確認 果実を一口かじり 腹がくちくなる幸福を再確認
そして翁は 巨樹を出た 何度も転んでは起きる その顔 泥だらけ 骨で聴きたまえ 骨で感じたまえ
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