ことばとこたまてばこ
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2006年12月05日(火) |
ひょうきんなけだもの 6 『視界一杯の亀裂』 |
空高くより小石は落下していく。 とてつもない速度の小石は風を切りさく。
小石の落下地点にはひとりの少年がいた。
そこは別離した彼女と初めて出逢った場所。 心臓を引き裂く悲しみに少年は、 手にメガネをたずさえながら でたらめな呼吸で赤く顔を染めて 泣いている。
速度を増し続ける小石は空すらも切りさく。 白いまっぴるまの空に 黒い縦一文字の空の傷。
やがて少年は涙に濡れる眼をぬぐう。 きりりと光る涙は服の繊維に黒く染みこんだ。
そして、しっかりとメガネをかけた少年 毅然と空をあおぐ。
すると、とてつもない速度の小石がメガネに直撃。
醜い唸り声を漏らして痛みにのたうちまわる少年。
太陽が目前で輝いているかのごとく、 恐れつつまぶたをゆっくりと開けた。
視界一杯に亀裂が咲き乱れて。
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