ことばとこたまてばこ
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2007年01月18日(木) |
だからぼくはうそをつく |
あのちっちゃな子が不安げに ちっちゃなまゆげをきゅるっとひそめ サンタクロースってほんとにいるのと聞いてきた
あのちっちゃな子のことをもしも君がちょっとでも知ったらね そんなたいした不幸でもないのに 世を嘆いてそっぽをむく子がなんてあほくさいんだろうって ぜったいにそう思うにちがいないんだ ぼくがそうだったんだ こどもの悩みはみんなおんなじだと思おうとしてた こどもの悩みはおとななんかに計り知れないんだから こどもの悩みはていねいに対処しないといけないと思ってた
思ってたんだけどやっぱりちがったんだよ
もしもぼくがあの子と同じ不幸にあったとしたら あのちっちゃな子のように笑えたかなと考えてみて ぜったいにできないんだと思い知らされたくらい それほどあの子をおそった不幸はほんとにほんとにひどかった
自分が受けてきた不幸をどうしてそんなに見せやしないんだろうと胸が痛むほど あのちっちゃな子は笑ってばかりでほんとにほんとかわいいんだ ほがらかににきにきと笑ってちからいっぱい大地をけって走るあの姿 あのちっちゃな子!なんてかわいい子なんだろう!
あの子はたしかにいまうたがいようもなく笑ってる あのちっちゃな子は笑ってばかりいてぼくはこわくなる あのようなちっちゃな子の笑顔ほど 周囲に気をつかった笑顔はないんだよ ちっちゃな子ほどひとりきりでは生きられやしないとわかっているから だからだれかに助けてもらおうと生きのびるために笑ってしまうんだよ
そんなあのちっちゃな子が不安げに ちっちゃなまゆげをきゅるっとひそめ サンタクロースってほんとにいるのと聞いてきた
あの子は不幸だった あのちっちゃな子がまたさらにちっちゃなころ あの子のこころはこわれてた あの子は希望なんてことしらなかった あの子がついに助けられたときも それが希望だったんだとわからないほど あの子のこころはこわれてた まだあんなにちっちゃいというのに!
たぶんおとなびた子があのちっちゃな子に サンタクロースのうそをふきこんだんだろう あのちっちゃな子はあんなに不安そう サンタクロースがないとなればまるで 世界がつぶれてしまうんじゃないかというくらいに
サンタクロースはなんでもあたえてくれる なんでもサンタクロースはかなえてくれる あの子はしんじなくてはいけないんだ あの子こそそんな無上の存在を信じなくちゃいけないんだ
だからぼくはうそをつく サンタクロースはいる ぜったいにいる いるんだ
あのちっちゃな子はみるみるうちに笑顔をとりもどして ちからいっぱい大地をけりながら走っていった
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