何十人もの敵に囲まれて絶命の淵へと追われた侍、敵を見据え、生命を吐露するかのような表情で口を一杯にひろげて刀を構えた。「あの怖いお口が開いたら、あんなにたくさんいるみんなが怖がったよ。どうして?」生まれつき声を聞いたことのないちっちゃな音無し子が問うた。ちっとおっきい音無し子は少し考え、答えた。「命の詰まった声で、刀よりもみんなの心を切り刻むことができたからなんだ」