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「なあ、ワシ、いいこと考えついたわ」夫が言った。
「なに?」
夫は、得意げにしゃべった。 「夜、歯磨きするの面倒やろ?だから歯磨きは居間で座ってする事に した。電動歯ブラシでゆっくり磨けるからええやろ?」
「いいけど…、口の中によだれがたまらないの?」
「そこのゴミ箱に『ペッ』ってするんや」
「え〜?!」
「いいやん。夜に洗面所に行くの面倒やし、これなら歯磨きを忘れない」
「え〜?ゴミ箱に『ペッ』ってするの〜?」
「いいやんか」
しつこく言うので、黙認する事にした。 ダメだと言っても、夫が寝るのは私が寝てからなので、『ペッ』とするのは 止められないので。
それから夫は、ほぼ毎日、居間のゴミ箱に『ペッ』としている。 歯磨き粉のニオイがついたティッシュが、ゴミ箱に入っている。
私は、朝起きたら大慌てで、ゴミ箱の中身を捨てるのが日課となった。 ちなみに、ゴミ箱には中にスーパーの袋がセットされている。 そのスーパーの袋を入れ替えるのだ。
久しぶりに、一人暮らしをしている長女が戻ってきて、 父親から「歯磨きして『ペッ』」の話を聞いた。 長女は、びっくりして「お父さん、そんなの汚いから止めてよ」と言った。
夫は 「お母さんのお許しをもらったんだも〜ん」と、何度も言ったそうだ。
長女が父親に言った。 「お母さんは、お父さんの事を諦めて許しただけで、イヤだと思うよ」
それでも、 「お母さんのお許しをもらったんだも〜ん」と繰り返したそうだ。
呆れる長女の目の前で、父はさらに驚く事をした。
台所で口をすすいだのだ。
長女は、それはもう驚いて、 「そんなんしたらあかん〜!汚い〜!洗面所でやってよ〜!」と叫んだ。
あまりにも呆れたので、父親を置いて先に寝たそうだ。
「な〜、お母さん、汚いやろ?」と、長女は私に言った。
台所で口をすすいでいるとは、知らなかった。 なんて汚い! これからは、朝イチでゴミ箱のゴミを捨てて、台所にハイターをまかないと ダメなのか?
あ〜。(脱力)
あんまりなので、夫に言った。 「台所でうがいなんて、しないでよ。汚い。私が台所をどんなに大切に しているか、知ってるでしょ?」
「わかりました。もうしません」と、珍しく夫はすぐに折れた。
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