2005年12月11日(日) |
莞爾トシテ笑フ、美容院の鏡の前で |
昨日は第二の故郷にわたしを形成してきたひとたちと会うために出かけた、寒空のした。
兄と慕うひとに、
どんなちいさな蝋燭の灯りでも、蜘蛛の糸でも、お前の中にお前が残っていれば、大丈夫なんだよ、絶対に大丈夫なんだよ、 と言われた。
蝋燭の灯が蜘蛛の糸が消えてしまう危機感、そのリアルな極限を一瞬であっても見てしまったわたしは、 ああ良かった、わたしが消えてしまわなくて良かったと心から思って思い切り泣いた。
人生で後にも先にもたった一度かもしれない、牙をむいて刃向かった過去のある年上の人には、
信じられないほどつらいことというのが世の中には確かに存在して、それを経験している間はきっとそのことは誰にも言えないし言おうとするべきではないけれど、それまでの自分が崩壊して自信も自我も消えて無くなったときに残るものがいちばん大切なものなんだと思う、 と言われた。
そのひとからそんな言葉が出るなんて昔なら想像もしなかったひとだったから、さぞやつらかったのだろうと、そしてそれを乗り越えつつある彼がわたしにはとてもつよく美しく見えて、 わたしもあなたみたいに笑える日が来るでしょうかと珍しく素直になって、私たちは酒を飲んだ。
ふにゃふにゃで頼りなくて、でもつらいときはいつもわたしが先に泣いてしまっていた親友は、
あっこどうして言ってくれなかったの、つらかったね、ほんとにつらかったね、
と言って泣いてくれた。 彼女はわたしの知らない間に強くなっていて、しゃんとしたまなざしで、わたしたち強くならなくちゃいけないからね、強くみせなくちゃいけないからね、とつぶやいていた。
そう、わたしたちは強くならなくちゃいけない。弱くても強くみせなくちゃいけない。つらいけどそういう宿命。そういう道を自ら選んだ。 今がどん底とは限らない、これからもきっと信じられないようなことはたくさん起こる。 けれど。 誰もが経験するわけではないことを経験して、それでも蜘蛛の糸ほど残った自分を抱えながら生きる決心をしたから、そしてわたしは女だから、 べそかきながらもわたしは強くなる、誰にも負けないいい女になる。
髪を切った。 美容院の鏡の前で笑うわたしは美しくて自分ですこし怖かった。
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