一生に一人だと思える相手
その人と出会えた奇跡
誰よりも大切な、最愛の人
ずっと、共に歩んでいけると思っていた――――――――
「白血病」
心をも明るい気分にさせる程の快晴の空。
そんな太陽の下、仲良さ気に並んで歩く一組の男女。
ゆらゆらと歩く度に揺れる栗色の髪を目に留め、ハリーは静かに笑みを浮かべた。
「何?」
その微笑に不思議そうに首を傾げるハーマイオニー。
その仕草にさえも愛しさを感じて思わず笑みを深くした。
「ん、ふわふわして可愛い髪だな〜って」
「っな・・・////」
ハリーの口から出たその言葉にハーマイオニーは瞬時にその顔が赤い色を広げる。
普段の強気な表情が一転して狼狽えたものへと変わり、それがハーマイオニーを幼く見させた。
その照れた表情はまだ出会ったばかりの頃の彼女を思い出させる。
「・・・・・・・どうしてハリーってそんな恥ずかしいセリフを口に出せるのかしら」
未だ顔を赤くしたまま、ハーマイオニーは悔しそうに唇を尖らせた。
「それはやっぱり、“愛”じゃない?」
そう言っていたずらっ子のように唇の端を上げれば、益々赤くなる顔。
何か反論するかのようにハーマイオニーは小さな声でぶつぶつと呟く。
そんなハーマイオニーの掌をきゅっと握り締めた。
その瞬間ぴくりと小さく反応する掌。
けれど、それは拒まれる事なく優しく握り返される。
そんなハーマイオニーの反応に、嬉しそうにハリーは頬を緩ませる。
こんな時、普段あまり言葉にしないハーマイオニーの愛情を感じられる。
きちんと彼女に愛されているのだと、ハリーは心から満たされる。
二人は止まる事なく歩き続けた。
まだ初々しい恋人同士のように、手を繋いだまま。
「・・・・・・・っ」
どれ位歩いていただろうか。
突然ハーマイオニーが立ち止まり繋がれていない方の手を額に当てて俯いた。
「どうしたの?」
「ちょっと・・・・眩暈が・・・・・・」
途切れ途切れに呟かれたその言葉にハリーは顔を顰めた。
「また?最近多いんじゃない?」
こうしてデートする度・・・・・・それ以外でもハーマイオニーは眩暈を訴える事があった。
始めのうちは回数も少なかったのに、最近では頻回になってきている。
ハーマイオニーの身体を心配し、ハリーは近くにあったベンチまで誘導して座らせた。
「・・・・・・大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込むハリーに、ハーマイオニーは弱々しげに微笑みを浮かべた。
「大分良くなったわ。・・・・・・・でも最近身体も疲れやすくて、少し動いただけでも息切れしちゃうのよね」
たぶん疲れが溜まってるんだわ。
そう言って笑うハーマイオニーの姿に、ハリーも少しだけほっとした様子で胸を撫で下ろした。
「ハーマイオニーはいつも無理しすぎるんだよ。研究研究って、そればっかりなんだから」
「好きな事に没頭して何が悪いのよ」
むぅ、と再び口を尖らせた様子にハリーは笑った。
ハーマイオニーは根っからの勉強好き。
それは学校を卒業した今でも変わらず、日々研究に勤しんでいる。
休憩を取ることも忘れて数日研究に没頭する事もしばしばだ。
そんな日々を続けていれば、体調が悪くなるのも当たり前だ。
そう、ハリーは思った。
けれど、それがまさかあんな事態になるとは今のハリーは微塵も考えていなかった。