綿霧岩
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細かい雨が降っていた。 濡れて歩こうかと思ったが、思い直してコンビニで傘を買った。 水色の傘にした。 傘をさすと、降っているかどうかわからないくらいに静かだったが、 たしかに降り続けていた。 風は感じられなかった。ジーンズの裾はべったりした。
その次の日は快晴だった。 ぷちぷちと大量に並びふくらむ木の芽を近くで見たら目が回った。気分が悪くなりそうな自分が小さかった。毎年毎年毎年毎年、枯れては再生するしつこさ、逞しさ。遠くから眺めれば美しく嬉しく。間近で見たら臓物みたいだった。犬のおしっこ、猫のおしっこ、人間のおしっこが交じる土。路地にはしょっちゅう猫がいた。公園には紐につながれた犬だらけ。そういうごちゃまぜの春を背に、屋根の下に入り腰かけたら、頭の中の流れが変わる。一人で歩いているときは、誰かと会話しているように、頭の中の話題が次々変わっていくので私はそれにただついていくのみだが、動作が止まれば話題の主導権が私に少しずつかえってくる。一人の私では話題が広がらない。同じ話題を繰り返すうちに、私の中のどこかに飲み込まれて回復したような気になる。或は忘れる。
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