1人と1匹の日常
2004年08月23日(月)  さくらんぼ(1人と1匹)
1年半前に書いた文が、ひょっこり、出てきました。


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私は1年近く前から、
一頭の介助犬と共に、生活をしています。
今日は、そのことについて、書きたいと思います。

はじめ、なぜ介助犬と生活をしたいか?と、
思ったかというと、
まずはテレビで観た介助犬の存在が、
初めての、「介助犬」との出会いでした。

鳴った電話をくわえて、
持ってきてくれる。
坂道で、車椅子を引っ張ってくれる。

当時、リハビリ病院を退院してすぐ、
社会復帰をめざす私にとって、
テレビの中の介助犬との暮らしは、
これからの自立に向けての、
大きな一筋の光のように見えました。

それから、
一頭のある介助犬との出会いをします。
それが、「りんくう」です。

介助犬と共に生活するには、
ユーザー(介助犬の使用者)との信頼関係を深めるため、
「合同訓練」という訓練期間を行います。
それから、
乗車試験(介助犬と共に交通機関を利用するには、
各交通機関ごと(一社ごと)の乗車試験を受け、
合格通知をいただいてから、
ようやく乗車することができました。)に挑戦。
無事合格をし、介助犬りんくうとの新しい生活を迎えました。

介助犬がこうして、乗車試験の合格を経て、
デビューするまでには、
介助犬トレーナーさんを始め、
育成資金をボランティアして下さった方、
一般の募金箱に支援して下さった方、
たくさんの方々の、温かく力強い支援をいただいています。

病気の再発、そして障害の進行していくにつれ、
当初の、社会への復帰という目標は、
少し形を変えたものへと、変化していきました。

私にとっての、社会参加は、
こうして家で自分のペースで過ごすこと。
毎日を、1日1日を、自分なりに暮らしていくこと。
そんなこんな毎日が大切。
今、側に一頭の介助犬がいてくれること。
それは、実際、とっても大きな、希望の存在です。

ベットにいても、車イスにいても、
リモコンを落としてしまっても、りんくうがしっぽをふって、
喜んでテイクしてくれます。
部屋から部屋への移動には、
ドアにつけたバンダナを引っ張って開けてくれます。
外では、私の押せないエレベーターのボタンを押してくれます。
レジでの会計で、カウンターが高い時には、
財布をくわえて店員さんに渡してくれます。

夜、眠る時には、一緒にお布団の中で寝ます。
再発してしまい、泣いている時・・・
夜、寂しい時・・・
病気の不安に襲われた時・・・。
いつだって、側には、温かい存在がいてくれます。

介助犬は、利口な立派な犬と言われていますが、
素顔?は、まだ3歳の若いおてんばさんです。
普段はどこにでもいるワンコとして、
大好きなぬいぐるみとじゃれ合ったり、
ボール遊びの時の、あの楽しそうな顔♪

もちろん、生き物である限り、
失敗もします。
合同訓練では、
一緒にトレーナーさんに何度も叱られました。
1人1匹で、
何度もどうしたら上手にできるようになるのか?
共に一緒に考えました。
そうして、こうして、今も、
日々、一緒に暮しています。

介助犬との暮らしの醍醐味は、
「共に何かできること」。
そのこと、そのものの、喜びです。
1人の私ならばできないことも、
1人と1匹の介助犬とならばできる!
「やったね!できたね!!ナイスナイス!!!」
共に喜ぶことができます。

ここで、ひとつ、お願いがあります。
お仕事中の補助犬には、絶対に触らないで下さい。
話しかける時は、
どうかユーザーの方にまず声をかけて下さい。

介助犬は、楽しくお仕事しています。
もし、お仕事中に触られました時、
その集中力が緩慢になってしまいます。

介助犬は、仕事が楽しくて仕方ありません。
失敗を悲しく、自分で悲観してしまうこともあります。
しっぽをふりふり、いつも楽しくお仕事してくれます。
そんな補助犬達を、応援していただけませんか?

もちろん、床にダウン(伏せ)していて、
使用者を待機している間も、
お仕事中です。
むやみに食事や飲み物を与えたり、
補助犬を触らないようにお願いします。

人間のために働く犬は、かわいそうですか?
決して、働かされているのではない。
その姿を見ていただけば、
一緒に笑顔を分かちあっていただければうれしいです。

私は介助犬との暮らしから、
たくさんの笑顔をもらいました。
どうか、やさしく見守って下さい。
やさしくて元気いっぱいに楽しくて、
しあわせいっぱいな笑顔の、
そんな補助犬達を温かく見守って下さい。

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※あれから、1年半の月日が経ちました。
りんくうと共に暮らして、2年3ヶ月。
補助犬法案の成立と共に、乗車試験の必要もなくなりました。
法案施行後は、厚生労働大臣から認められた指定法人から、認定試験に合格後、正式な介助犬として認められます。

わたしたちは、あれからも、相変わらず、1人と1人で、りらっくす〜しながら、のんびりと毎日を暮らしています。
立派な介助犬ではないかもしれないけれど。
立派な人間ではないかもしれないけれど。

たくさんの温かな方と出会い、ハートをいっぱいいただき、
共に生きる幸せを、しみじ〜みと感じてる、この頃。
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