うさぎのつぶやき

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2003年06月13日(金) ◆父の日

数十年前の父からの手紙を徒然日記にUPしてみた。

父や母からの手紙は、高校を卒業して大阪に出てきた時から折に触れ届いてきたのだが、いわゆる“棺おけの中まで”持って行きたい手紙というのが何通かあって、今回UPしたのもその中の一通である。

もちろん私もそうなのだが私の友人達は、そろそろ自分の子供達が結婚するような年齢に達してきているはずである。
娘や息子を送り出すときに、静かに自分を見つめる余裕を持って欲しいと思ってご紹介する気持ちになったのだが、このネットによって知り合うことになった友人達は、その送り出される又、最近送られた年代の方が多いようである。

送り出す両親はどういう気持ちだったのか、ちょっと思い出して見るのも悪くないかも・・・。(余計なお世話かな?)

        xxxxxxxx

<2003年06月12日の徒然日記より>

+++父の日に寄せて+++   

今私の手元に二通の古い手紙があります。
父から送られてきた手紙です。
父や母からは、本当に数え切れないくらいたくさんの手紙が届きました。
殆ど全て残してありますが、中でも何通かは永久保存にしておくつもりのものがあり、この二通もその中の二つです。

今回は、そのうちの一つをご紹介したいと思います。
私の結婚が決まり、あと数ヶ月で会社を退社するという頃に、届いた手紙です。

みどりちゃんへ

時は流れ 日は移って気がつくと秋から冬へ静かに音もなく変わりつつある自然のたたずまい・・・
朝、県営グラウンドの中を抜けて職場への近道を歩いて行くと、今まで自転車で舗装街路だけを通っていた頃には気づかなかった季節の息づきが仄見えて、
何となく気分が爽やかだ。
自転車を次々に二台も盗まれ、今歩いて通勤している。
片道、大股で二千三百歩、急いで20分、着いたときは少し汗ばむくらいで、健康的だ。
(中略)
処で、光陰矢のごとしとか・・・Hさんが訪ねて来てからもう一ヶ月、その後どうか?
嬉しい毎日、不安な毎日、忙しい毎日だろうと思う。

結婚とは、歌の文句のような「ふたりのために世界はあるの」といったロマンティックな面ばかりではない。
冷たく厳しい現実に耐えねばならぬことが多いものだ。“自ら選んだ人と自ら選んだ道を歩く”良くても悪くても覚悟を決めて一生歩きつづけるべし。

お前に家庭の主婦としての、妻としての、教養心得を専門的に勉強する機会のなかったことが、与えられなかったことが、残念だ。
家事、経済、茶の湯、生花、洋裁、編物、性、育児、料理、作法、歌舞音曲などなど、本当は高校卒業から、結婚までの間に、これ等全般に亘ってひと通りマスターするのが理想なのだが・・・

今からでも、そして結婚してからでも絶え間ない勉強をして立派な奥さんになってくれるよう願っている。
(中略)
世間並みの親らしいこともできずに、それがお父さんの生き方、哲学の必然的結果で、己独りの信念としては少しも悔いるところはないのだけれども、お母さんや子供達に不自由をかけていること、貧しさゆえの淋しい思いをさせていることを省みる時、一面、情けなく口惜しい気持ち、すまないという気持ちを抑えきれない。許せ・・・。

話したいことが一杯あるようで、手紙ではもどかしい。
電話でも意が尽くせない、かといって先達ての、帰郷の際顔を合わせていてもいざ口にしようとしても紋切り型の言葉しか出てこない。

胸の中の気持ちというものは、どうしてこんなに表現のむつかしいものなのだろう?。
一体何が邪魔しているのだろう?・・・。
いや、そうではあるまい 表現がむつかしいのではなくて表現したくないのではなかろうか?
思うに、胸の奥底の赤い血の流れる心臓に密着したドロドロの「真情(こころ)」というものは、たとえ妻子であっても人にはあからさまにしたくない“人間の悲しみ”ではなかろうか?

渥美清なら「ヘン、男が泣いてたまるかい!」と鼻をこすり上げるだろうし、
チャップリンなら、ドタ靴の足を曲げて、黙ってステッキを高く上げるだろう。
お父さんは、・・・。
お父さんは自分の心をじっとみつめるだけだ。
(中略)
勤めは、真面目にやっていると思うが、
たとえ間もなく辞める会社でも、最後の一日まで誠意を持って働くこと、立つ鳥跡を濁さず、とか。
必要充分以上に尽くしなさい。

夜も更けてただ静寂、独り遠く大阪を思う。
しあわせになってくれ、  こちらみな達者


 みどりちゃんへ
            〇月〇日 夜    父より


今度の日曜は、父の日です。
ちょっと父のことを思って書いてみました。


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