死の二週間前に届いた差出人のない手紙は、この作者お得意の終戦間際を鮮明に甦らせてくれた。舞台は沖縄・・。
その短い手紙の文面の間に 19歳の主人公佐敷真市の重い数日が少々前後して進められている。 真市は同じ防衛召集された清武の妻であるチヨと生存の望みがない赤ん坊を助けるため、戦場を北上していた。?? 生きているはずがないと分かっていた。それでも、捜さずにはいられなかった。脱走した自分を悔いたためか、清武を撃ってしまったためか・・。
死してなお子供を守ろうとする母親のそばで真市は、感覚と感情を遮断しようと強くまぶたを閉じた。
沖縄戦の記憶は人それぞれである。 ただし強いという一言で共通していた。
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