「この人は誰に愛され、誰を愛していたでしょうか。 どんなことで人に感謝されたでしょうか」
坂築静人はそう訪ねて 死者を悼む旅を続けている。
その旅の途中で 雑誌記者の蒔野抗太郎と夫を殺してしまった奈義倖世と出会った。 そして奈義倖世と、倖世の右肩に時々現れる殺された夫である甲水朔也と時に話しながら旅を続けた。
そして胃がんで余命宣告された静人の母が、旅の息子を思いながら娘の美汐が身籠った赤ん坊が産まれるのと入れ違いのようにあの世に旅立っていく。
児童虐待や不登校や引きこもりや家庭内暴力といった、現代社会の抱えているひずみというか暗い部分の物語を多く書いている作者ならではの発想だと、心に深く染み入る読後感だ。 読んでいてもかなり疲れる物語だったので、執筆する当事者の思いはいかばかりだろう・・というのが正直な感想だ。
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