2004年04月27日(火) |
舞台「プワゾンの匂う女」 |
先週の土曜日、芸術座に舞台を観に行った。 私は帝劇には足を運ぶのだが、芸術座は初めてである。 芸術座の演目は敷居が高いと言うか、何と言うか…正直言えば、あまり食指が動かなかったのである。 では、何故観に行ったのか・・?それは今度お話しようと思う。
十朱幸代さん主演のサスペンス劇「プワゾンの匂う女」 叙情的な世界ではないので、理解し易い。文字通りサスペンス劇場である(笑)。 とは言っても、そこに巧妙なトリックがあるわけではなく、ひたすら人間の内面を描く心理サスペンスとでも言うのだろうか・・?
登場人物達は、煌いていた過ぎ去りし青春を引きずっている。 なかなか過去から決別出来ないのだ。 彼等は、私と同じような世代の人間達なのだが、あの青春の郷愁のような想いは、あまり共感出来なかった。 もちろん、青春時代の友人に会えば、懐かしく昔話をする時もあるが、現実には、今を生きることで精一杯というのが本音であると思う。
一番過去の呪縛から逃れられないでいるのが、十朱さん演じる二役の女性。 子供時代に自分の目の前で妹を亡くした痛みと、20年程前に恋人を亡くしたショックから未だに立ち直れないでいる。 とても繊細な女性なのだろう、彼女の姿を見ていたらやるせなくなった。本当にやるせなくなった…。 そしてその痛みを復讐という形で癒そうとするのだが、この姿も哀しかった。
十朱さんは本当に綺麗だった。あんな風に歳を重ねていけたら、私は他には何も望みません・・(笑)。 そして、やはり上手かった。 あれが何十年もあの世界に生き残り、そして主役を張っている女優さんの度量なのだ…とねじ伏せられた。 十朱さんの存在があまりにも強烈で、他の共演者達がかすんで見えてしまうのは致し方がないことなのだろう。
全く性格の正反対の女性二人を演じるのだが、その演じ分けを、これでもかっ!と言うほど、演っていた。(笑) 私は好きだが、人によっては付いていけないかもしれない。 時にコミカルに演じ客席の笑いを誘い(とても上品な笑いだ)、そしてクライマックスは、息をもつけぬ勢いで見せる。 その身体からは「私は女優〜」オーラが光輝いていた(笑)。 久しぶりにああいう女優を観た。
この作品で一番ずしっときた台詞。 十朱さんが演じる蘭子が藤真利子さん演じる由梨に言い放った言葉。 「どうして私があんたのことを好きになったか分る?あんたがフツーの女だから。あんたは自分ではフリーライターとか何とか言って、少しばかりすすんでいる女と思っているけど、あんたフツーの女。本当にフツーの女。」(←正確ではないかも) こういう発想は本当に女性特有のそれに思える。 相手を打ちのめす時に、男は「フツーの男」という言葉を選ぶだろうか…? 痛い事実を突きつけられ、打ちのめされている表情をしている由梨が印象に残っている。藤さんがとても上手かった。
衝撃な結末をむかえ、ラストに精神科医が由梨に向って言う。 「あなたは、過去をちゃんと決別しなければなりません。」 …はて、私はちゃんと過去と決別出来ているだろうか…? 自分では出来ているつもりでいるが、もしかしたら、過去を引きずるもう一人の私が、自分の中に潜んでいるのかも知れない…。
カーテンコールは十朱さん一人だけのカーテンコールだった(そこまでやるかっ!?)(笑) 私としては、出演者全員に拍手を贈りたかったのだが…。
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