竜也語り

2005年02月26日(土) 小説(?)「電車男」

いにしえの文豪達がこの本を読んだら恐らくひっくり返ってしまうことだろう。某巨大掲示板の書き込みがそのまま物語となっているもの。こんな手法が可能なのねぇ。この着眼に拍手。
私が一番最初にその掲示板の存在を知ったのが4年位前になるだろうか。「???なんじゃ、こりゃ…」これがその時の感想だ。その書き込みの独特のスタイルに戸惑いを感じながらも、それでもやたら面白く、気が付けば随分と長い時間読みふけっていた(苦笑)。今でもたまに覗いている。いや、いい加減もうやめようとは思っているのだが…しかしあの掲示板には不思議な魔力が備わっており、つい吸い寄せられてしまうのだ…(汗)

さてこの本の話。一言で言えば面白かった。そしてあの掲示板でまさかこんな感覚を得られるとは思いもしなかった後味の爽やかさ(笑)。 まず悪い人が登場しない。電車男もエルメスもそして住人達も本当にいい奴らだ。もちろんこの掲示板特有の下品な妄想も晒している。でもそれはある程度誰にも覚えのあることで、だけれど知人には言いずらくて…。そんな恥部をストレートに晒すことが出来るところもあそこに引き寄せられる理由の1つかも知れない。
電車男の純な恋の経過報告に、アンタ・・何もそこまで…と引いてしまうほど大袈裟に反応する住人達がまぁ滑稽で。私には電車男よりも住人達の方がいい味を出しているように感じた。可笑しさの中に哀しさがちょこっと顔を出す…そんな物語もあるのだが、この話の中に私はあまりそれを感じなかった。中には住人達が女性から受けた悲惨な仕打ちを告白している場面もある。しかし「そんなのは100%相手の女が悪い!気にするな!」と同情よりも檄の気持ちの方が強くなってしまった…(汗)。
気の弱い奥手の電車男をひたすら応援していく個性豊かな住人達。そして電車男も自分の情けない姿を素直に晒している。そこには見栄も陰険な嫉妬もなく(可愛い羨望はあるのよ)、あるのは本音と電車男のエルメスへの恋の成就を願う気持ちだけだ。何よ、これが本当の友情の姿なんでないの?…と真面目に考えてしまった…。

ふざけた(?)掲示板の中にも真実はある。時に住人達の電車男への説得の言葉はとても的を射ていて…。私まで勇気付けられた。こんな奴らと一緒に酒を酌み交したいものだ。
こんな魅力的な住人達であるので、こちらは自分の好きなように彼等の姿を想像する。彼等は俗に「アキバ系」(と言うのですか?)と呼ばれる人達だそうだが、私あまり秋葉原には行かないので、そこに頻繁に出没する若者がどんな風采なのか今一つ分らなかった。でもこのスレの中で具体的に彼等の姿を絵(?)で描いた書き込みが登場し、それを見た瞬間、あぁ〜っ!いるいる!こんな感じの男の人達〜と、可笑しさが倍増した。

当然この本の中には美しい文学的な表現なんて1つも存在しない(笑)。でもこんな下品で露骨な言葉がこんなに爽やかな気分にさせてくれるのね〜と、ちょっと意外な感動が。たぶん電車男を支える住人達の気持ちが爽やかだったからかしら…?
大好き>おまいら


 < 過去  INDEX  未来 >


ATSUKO  [HOMEPAGE]

My追加