* たいよう暦*
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中学高校と通っていた学校は、一部の校舎の床は木でした。 ほこりは散るし、水拭きはめんどくさいし、雑巾がけすると妙にくさくなるしで、あまり好きではなかったけれど、これが真夏になると、あっという間に「極楽の場」と昇格する。
クラブ活動のために、夏休みによく通っていた学校。もちろん、冷房などない。 あるのは、あけはなした窓からかろうじて入ってくるゆるやかな風。 太陽が照りつける南向きの教室は、信じられないほど暑くなり、少し動くだけで汗がしたたりおちる。 ところが、中庭に面した廊下にでると、空気はぐんと涼やぐ。 日の射さない廊下の木の床は、ひんやりとしていて、何十年とたった木の独特のつや感があり、すべすべと気持ちよさげに見える。 引き寄せられるまま、(廊下であるという概念を捨て)体操着姿でごろんとねっころがり、窓から入る中庭の涼しい風を受けながら目をつぶると、すうっと睡眠の入り口まで、簡単にたどりついた。 遠くから吹奏楽部の自主練の出す「ぷぅおぉ〜」「ぱぁ〜ぁ〜」という管楽器の音を聞きながら、風わたる廊下で一瞬の眠りに入るあの極楽の間・・・!
夏といえば、あの廊下を思い出す。 木の廊下が頬にあたる、すべすべ感。風の抜けるその場所での、うっとりするような清涼感。 もう、取り戻せない、あの夏の一瞬。
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