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涙の在処


アタシは泣かない。
泣かない、というよりも。
泣けない。
16歳。
チチヲヤが死んだ時ですら。
涙の欠片も見せず。
可愛気のない子どもだ、と。
親戚中から叱られた。



それが。



昨日。
アタシにとっては遠くなってしまった故郷に住む、オニイチャン。
久しぶりに、話しをして。
涙が溢れて、零れて。
止めどなく……。
泣く、ってことは。
こういうことなんだな、と。
少しだけわかったような。
アタシの心の隅っこにも。
ちゃんと涙の在処は存在して。
泣けないのではなく、泣くことを、初めから。
諦めていたジブンにふと気付いた。



みんな、いろいろなものを抱えている。
ある人にとってそれは。
取るに足りないことだとしても。
イノチを引き替えにしても守りたいものだったり、
大切だったり、
切ないキモチだったり、
もう。
言葉にできない想いが一気に空へ飛んで。
アタシはティッシュ箱ひと箱分くらい、泣き明かした。




不思議と。
嫌な気分では、ない。
むしろ。
澄明なほど。
キレイな空気に包まれている感じ。
アタシには。
オニイチャンもオネエチャンも。
それから未だカゾクと呼べる家族にも。
優しい糸で繋がれた、みんなが、いる。
そのことを忘れずに。
忘れずに……。
何も手に入れなくとも。
目には見えない絆だけで。
生きていこう、というキモチが沸いてくる。





3年後の生存率60%。
その1年がもうすぐ終わり、あとどれだけ時間があるのか、と。
単純に計算してみた。
答えはわかっている。
結論は見えている。
アタシが今、やらなくてはイケないこと。
涙の在処がそれを教えてくれたんだ。
うん。


2009年09月29日(火)




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