リアルタイム小説(フィクションです!)

「はい!お疲れ様でしたー!」
スタッフの声が聞こえて、やっと緊張感から解放された。
ほっ、と誰にも聞こえないように僕は息を吐く。
コンサートツアーも無事終り余韻に浸る暇もなく、僕らは次の仕事をしていた。
今日はヒロの本の対談もあり、びっちりと忙しい1日だった。
でもヒロとずーっと一緒にいれるから楽しくってすぐ時間が過ぎてしまうのだけれど。
「大ちゃーん!お疲れ!はい、コーヒー」
ヒロが笑顔で僕にコーヒーを持ってきてくれた。優しいぁ……。自分だって疲れてるはずなのに。
「ありがとう」
僕もにっこり笑ってそれを受け取った。
お互い楽屋が別々なので、なんとなく暗黙の了解とゆう感じで自販機のそばの椅子に腰かけた。
「今日はありがとう、ね。対談してもらっちゃって。最近毎日会ってるからこれといった話もないかなーと思ったけど、やっぱり大ちゃんと話してるときが1番リラックスしてぽんぽん話題がでるから不思議だよね」
ヒロの綺麗な瞳を僕にずっと向けながらそんなこと言うなんて反則だよ…。
「そう?貴水様にそう言ってもらえて光栄ですよ〜」
僕は冗談を言いながら、必死に照れ隠しをするためにコーヒーを一気に飲み干した。
ドキドキドキドキ……。
お、さ、ま、れ!心臓!!
ヒロの言葉にいつも一喜一憂する僕。
好き…て感じるようになったのはいつのことだろう。
もう昔すぎて覚えてないや。
ヒロは当然、僕がひっそりと胸に抱えてる大事な恋心のことは知らない、と思う。
ファンのみんなからは『大ちゃんヒロのこと好きなのばればれ!』ていつも言われてるけど。
もしかしてヒロにもばれてるのかなあ…だって好きなひとの前では嬉しくなってしまうんだもん。それにヒロはいつも優しいからつい甘えてしまう。
ヒロともっと、ずっと一緒にいたいけど、この居心地の良い関係が壊れるのが嫌で告白できずにいる。
「ヒロ!車、用意できたわよ」
向こうの方からヒロのマネージャーの林さんがやってきた。
「お疲れ様です、浅倉さん。今日は貴水のためにありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそ。お疲れ様です」
「それではお先に失礼しますね。さ!ヒロ、今夜こそ本の原稿仕上げて下さいよっ!」
ヒロが仕方なく…といった感じで椅子から腰をあげた。
「せっかく大ちゃんとご飯食べに行きたかったのにナー!ちぇーっ!」
と、大袈裟にマネージャーに文句を言いながら出口の方へと歩き始めた。
するといきなり歩みを止めて、くるりと僕の方をむいて、
「近いうちにまたご飯食べにいこうね!メールするよ〜」
「う、うん!待ってる!原稿頑張って、ヒロ!お疲れさまぁ」
片手をひらひらさせながらヒロは帰って行った。
「はぁ…」
胸の奥がぎゅっと鷲掴みにされたみたいに痛い。
次のアクセスの仕事はいつだっけ…僕のソロツアーもあるから当分忙しくなるな…。
ヒロの姿が見えなくなるといつも泣きたい感覚に襲われる。
僕のこと、いつもぎゅっと抱き締めていてよ…ねぇ…ヒロぉ…。
「何してるのよ、大介。ご飯でも食べに行くわよ?あんたの好きな肉にする?」
安部ちゃんにいきなり話しかけられてびくっとする。
僕はすばやく笑顔になると、
「あは、なーんか昼とか食べ過ぎちゃってあんまりお腹空いてないんだ!安部ちゃん悪いけど今夜はまっすぐ家に送ってくれないかな?」
「…わかりやすいやつ」
「安部ちゃん?なんかいった?」
「いーえっ!わかりました。今車手配するから。今夜はゆっくり休みなさい。お疲れ、大介」
そういうと安部ちゃんは携帯でなにやら連絡をとりはじめた。
もちろん、安部ちゃんには僕の気持ちなんてお見通しなんだろうな。
でもこの消失感はヒロにしか埋められない……。
「大介ー!車OKよ」
安部ちゃんに言われて僕もこの場を後にした。


「あ〜ぁ…」
一人で大きい溜め息をついた。
家に帰って来てから何も食べる気もおきなく、シャワーあびて、アニーだけには餌をあげて少し遊んだ後、彼女は寝てしまった。
僕は久しぶりにゲームをしてそれなりに楽しんでいたが、またふっ…とヒロのことがよぎりコントローラーを下に置いた。
なんだか虚しくなってきたので、憂さ晴らしにパソコンを立ち上げた。
気が付くといつもの癖でヒロのホームページの所をクリックしてしまっていた。
「僕のバカ…」
と呟きながらもヒロ日記をクリック。
すると今日の日付の日記が更新されていた。
読んでいるとそこには
【そして大ちゃん、今日の対談どうもありがとう!!!】
というメッセージがあった。
あ…ヒロったら!…こんなとこにまで…。
嬉しい……大好き…だよ……。
僕はさっきまでの焦燥感が消えて、自然と笑みがこぼれてしまった。
こんなことだけで僕を幸せな気持ちにできるのはやっぱりヒロしかいないよ…。
そんな暖かい気持ちを抱えながらパソコンを落としてベッドに潜り込む。
今日はなんだかいい夢が見れそうな気分。
僕はヒロのことを考えながらそっと眠りについた。


おしまい。


いいわけは明日の日記に書きます(笑)
駄文ですみません(平謝り)
2005年08月24日(水)

手と手を重ね生きてく / sachi

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