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憂いの泉
イズミ
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2005年09月25日(日)
野井戸の呼び声

幻の光、太陽の西、野井戸。

全ては私の中で一つにつながる。


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幻の光


貧しい漁村の猟師は、ある凪ぎの海の日に
海面に光る部分があることに気付く。

それを魚の群れだと思った猟師は舟を出すが、
その途端、瞬く間に海は荒れ、猟師は帰らぬ人となる。

また、仕事も順調で子どもも生まれたばかりの幸せなはずだった男は、
ある夜何かに誘われるかのように線路の上を黙々と歩き、
電車に撥ねられたて命を落とした。

老婆は語る。
「幻の光は、妖しげに人を引き付け、精を喰らう病に侵す」と。



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太陽の西


農夫は朝日が顔を出すと畑に出、太陽が真南まで上ると休憩し、
夕日が沈むと家へ帰るという生活を続けていた。

毎日毎日、ただひたすら同じ毎日を続けていた。

ある日の昼、農夫は持っていた農具を捨て、
太陽の西を目指して歩き出した。

その向こうに何かを求め、
ものにとり憑かれたかのように、
沈む太陽を追ってひたすら西へと歩いていった。

そして農夫は、いつしか力尽きて地面に倒れる。



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野井戸


草原と雑木林が広がる高原にある野井戸。

いつ作られたのか、誰が作ったのか、何もわからない。

存在を知らせる看板も柵もないその野井戸は、ただひたすらに深く、
一度落ちてしまうと孤独と共に死を待つほかない。


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小説を何度も読むうちに私の中に刷り込まれたイメージです。

原作と違う部分が多々あるかと思いますが、ご了承ください。

憂いの泉…それは私にとっての
幻の光であり、太陽の西であり、野井戸です。



今日、彼女と話をした。

利己的で、家にお金を入れない旦那の機嫌を伺い、
おびえながら暮らす今の生活は限界だと、
思いのたけを告白してくれた。

そして私は憂いの泉の話をした。

分かり合える喜びを感じることはできたけれど、
野井戸の呼ぶ声が遠ざかった気はしない。



明日、会社に行けるかな…。

ちょっと不安。




エンピツ