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憂いの泉
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2006年05月16日(火)
備忘録、幻の光2。きっかけは逃亡。


七さんとけんかがちだったころ、やっていたバイトも最悪に近くて、
なんかなしにボンってなって、
私が選んだ逃げ場所は一人旅に出ること。

そういえば、前夜くらいにケータイを壊したや。

真っ二つにへし折った間から意外と弾力のあるコードとかチューブとかが
うにょんって出てきたのを覚えてます。

あからさまに意図的に折られたケータイをもってくわけにはいかないので、失くしたってことで新しいのに交換ということにしました。

お金は大切に使わなきゃいけないので
「いちばん安いのでいいです」って言ったら、
機種変や解約した人が置いてった中古のやつがお店にあるそうなので
それにしてもらいました。

なにげに初めてのカメラ付きだったので、ラッキー。



彼女とケンカして旅立つとは言いながら、
駅を出発するときは彼女に見送ってもらってたりして
意外とよりを戻した風ではあったんだけど、
ここまできたら乗りかかった船な感じで、
なし崩し的に曽々木への旅はスタートすることになりました。

親にもバイト先にも何にも言わずに出てっちゃったので
家出とか失踪とかそんな感じです。

彼女が、保護者的に私に持たせた手紙には、
「きちんとご飯を食べること」「無駄遣いをしないこと」
そして「悪いことをしないこと」みたいなことが書いてありました。



持ち物はユニクロのリュックに、着替えを3日分と通帳とひげそりと
…ほかは何を持ってったかな、ぜんぜん覚えてないや。

あと忘れちゃいけないのは、交通手段である青春18切符と時刻表、
そして宮本輝の短編集「幻の光」です。



これの表題作「幻の光」の舞台こそが曽々木なのです。

そもそも、私が小説をまともに読み始めたきっかけが、
彼女が最初に私に紹介してくれたこの「幻の光」でした。

再婚して嫁いできたおばちゃんが前の旦那のことを思い出してため息をつく、
みたいな感じの話です。

人の目をくらます幻の光、そして精を喰らう病。

旅行中に何度も読み返したせいか、およそ80ページの一言一句が、
憂いの泉たる私の心の奥底にしんと染み渡る感じがするくらい、
共感できる作品です。





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