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北端あおい



 あるひとへ/ごーふる

あるひとへ

 ごーふる、ちいさいときから大好きなのです。
うすくてあまくてかるくて美味しいから。
はんぶんあげようかって、いってくれてありがとう
(こちらもちゃんといただきました)。
 でも、ごーふる大好きなのでうなずきそうになってしまいそうだったのでした(よくばり)。

 ところで、ごーふるをぱりぱりたべながら思い出しました。詩人・歌人の穂村弘さんの作品にこんなにすてきなごーふるのうたがあります(ご存じ? 知っていらっしゃるのなら、…でも、もういちど読んでも素敵ですね、ね)。

「自分の吐く白い息。思い出した。
楽しかった。転んで氷に手をついたまま、はあはあいうのも楽しかった。
そうだ、俺たちは、俺は、つるつるでごーふるだったんだ、最初から。
そして、そしてホチキスの…。」
わたしは言葉を切って、深呼吸した。こわかったのだ。

「そして、ホチキスの針の最初のひとつのように、
自由に、無意味に、震えながら、光りながら、ゴミみたいに、飛ぶのよ。」
と、女は笑った。
私も笑った。笑うより他なかったのだ。

(穂村弘「ごーふる」『シンジケート』沖積社、1990)

 このうたを片手にごーふるをぱりぱりたべています(最初はチョコレェト味にしました)。
ホチキスの針みたいに光ってとべたら、それはそれはもうすてきでしょうね。
 ところで、そちらはもう、ごーふるは召されましたか?


ついしん
穂村さんの本では『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』(小学館、2001)がすてき。
たとえば、こんな歌があって。

・可能性。ソフトクリーム食べたいわ、
ってゆきずりの誰かにねだること

・「殺虫剤ばんばん浴びて死んだから
魂の引取り手がないの」

・早く速く生きているうちに愛という言葉を使ってみたい、
焦るわ

・神様、いまパチンて、まみを終わらせて
(兎の黒目に映っています)

・なんという無責任なまみなんだろう
この世のすべてが愛しいなんて

なんて、きらきら鋭い歌ばかりで、どきどきします。
 
・夢の中では、光ることと喋ることは同じこと。
お会いしましょう

 では、またお会いしましょう。

2005年05月07日(土)
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