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■ 太宰治『お伽草子』
言葉といふものは生きている事の不安から、 芽ばえて来たものぢゃないですかね。 腐った土から赤い毒きのこが生えて出るやうに、 生命の不安が言葉を醗酵させているのぢゃないですか。 よろこびの言葉もあるにはありますが、 それにさへなほ、 いやらしい工夫がほどこされているぢゃありませんか。 人間はよろこびの中にさへ、 不安を感じているのでせうかね。 人間の言葉は工夫です。気取ったものです。 不安の無いところには、 何もそんな、いやらしい工夫など必要ないでせう。
(太宰治「お伽草子」『太宰治全集 7』筑摩書房、1990)
2005年05月09日(月)
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