37.2℃の微熱
北端あおい



 空虚

そのひとはわたしのなかにゆびをいれて、わたしの空虚を
みたしてくれていたのだけれど、それではとてもたりなくて
深く深くみたされたかったから、もっともっととねだった。
じぶんでこしをおとして、そのひとのゆびをもとめていく。
この空虚をうめてほしい。
これは空ではないのだと、そのゆびでおしえてほしい。
むちゃくちゃにひっ掻きまわして、いたいと叫ばせてほしい。
いたみで、叫べるうちはまだからっぽじゃないから。

それからじかんがきたので、そのひとはゆびをぬいて、
はいおしまいといった。
いれてくれていたゆびのぶんだけ、わたしはわたしの空虚がひろがったのをかんじて、なみだがにじんだけれど、なくのはがまんして、おようふくのみだれをなおした。
(パソコンを整理していたらみつけた2004年5月24日の日記)

2005年09月03日(土)
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