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食事が終わると、彼女のこめかみは淡いピンク色になり、目は輝いていた。こんなに穏やかでくつろいだ、それにほとんど幸福そうな彼女を見るのはめったにないことだった。そうたしかに、ほとんど幸福そうだった。それでぼくはヨーグルトを食べるのを忘れた。 「でもなぜ、きみはもっと何度もこうならないんだい……?」ぼくは尋ねた。 彼女があまりにもすごい見つめ方をしたので、ぼくは質問を繰り返したくなくなった。そんなことはすでに少なくとも百回は話したのに、なぜぼくは言い張るのか、なぜひっきりなしにその問題に戻るのか……?ぼくはまだ言葉の魔術を信じているのか? その問題で最後に話し合ったことをぼくははっきり憶えていた。それは二世紀も前のことではなく、それを暗記しているように思えた。そうとも、彼女は震えながらこう言ったのだ、 でもあんたは人生があたしを敵にしてることがわからないの、あたしがちょっと何かを欲しがるたびに、何の権利もないことが、子供を持つことさえ禁じられていることがわかるのよ……!? そしてたしかに彼女がそう言ったとき、多くのドアが彼女のまわりで力いっぱいばたばたと閉じられたのだった。
(フィリップ・ディジャン、三輪秀彦訳『ベティ・ブルー』ハヤカワ文庫、S62)
2006年04月09日(日)
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