酒場と野球と男と女
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| 2006年03月04日(土) |
野球題材ショートショート、書いてみました。いよいよ文壇デビューですかぁ〜〜の巻 |
薬飲んで一日22時間爆睡したら、復活! 制作デザイナーのS田嬢、代理店のF沢氏、お世話になりました。 今度何かで、お返しさせて戴きますです。 で、まぁ、今朝寝過ぎも含めボワ〜んとしてる内に、何となく創作文章が、 浮かんできて、中々頭から消えないもんで、まあいいや書き留めとこ、とワードしたものこっちにも転記しちゃおう、っと。
野球題材ショートショート小説「スチール」 作:熱血雄弥次
一塁ベース上に立つ小太りのノリヒロが、中々こちらを向いてくれない。
(あのヤロー、全くぅ)
三塁側ベンチで、少年野球「野川ジャイアンツ」監督の安部は、舌打ちし、
右手で右耳に触れようとして、止めた。
最終回裏、最後の攻撃。2対3。ワンアウト一塁。まず同点。
バッティングに期待が持てない次打者に、バントのサインを出そうとした。
が、肝心のランナーが、ベンチを見ようとしない。
(こっち向けよ、バカヤロー)
念でも送るように安部は、ノリヒロを睨みつけた。
念は通じず、めったに塁に出ることのないノリヒロは、ニコニコしながら、
バックネット裏でビデオを撮る母親に、何度もガッツボーズをとる。
日除け帽に、濃い目のサングラス。体のラインに密着したピンク地のブランドT
シャツに、下着を見せ付けるようなローライズジーンズの女性が視線に入る。
(あの母親、四十近いはずなのに、若いよなぁ)
息子とは違うスラリとした肢体ながら、あるところにはある、男好きのする
人妻らしい艶やかさ。
昨晩のことがちらりと掠めて、ドキッとした。
安部が想像していることを見透かしたように、ノリヒロの母親アキコが、
ニコッと微笑み、こちらに軽く手を振ってみせた。
(げっ、何してんだよォ、大胆なのはベッドの上だけにしろよォ〜)
自分の野卑た思いに苦笑いし、安部は、知らずに思わず右手でアゴを撫でた。
一塁ランナーのノリヒロが、重い身体を揺らし、鈍いスタートを切った。
「あっ、バカっ!」思わず声が出た。
「何走ってんだぁ!」
小さく叫んだ安部に、隣に座っていたスコアラーの仲村が呆れ顔で、呟いた。
「だって監督、盗塁のサイン出しましたよ」
「えっ?」
ベンチにいる子供たちは、こわごわと2人の大人、安部と仲村の方を見ている。
「監督ぅ、アゴ、アゴは盗塁っすよ」
チームリーダーで、6年生ながら170�造鯆兇溝粒覆離�ヨが、体同様に図々しい
物言いで、皆を代弁した。
いつも無表情のまま、スコアブックとグラウンドを交互にみているだけの仲村が、
初めて意見した。
「うちの息子を走らせるというのは、どうでしょうかねぇ。まぁ、意外性といえば
そうでしょうが…」
二塁ベース4、5メートルも手前で、立ったままタッチされたノリヒロは、
はぁはぁ肩を揺らして戻ってき、父親がつけるスコアブックを覗き込んだ。
「ねぇ、父さん、さっきのヒット?ヒットだよね?」
「ああ、ヒットだ、ヒットですよね監督」
父子そっくりな肥満体に圧倒されたか、それぞれの理由での2人への負い目からか、
「うん、ナイスバッティング!」
と思わず云ってしました。
そこだけは母親似の、大きな瞳を輝かせたノリヒロの
「ありがとうございます!」が、審判の試合終了を告げるコールをかき消した。
(ま、いいか、負けるときはこんなもんだ)
「ナイスゲーム!さぁ、並んであいさつだ」
手を叩き、子供たちをベンチから放した安部は、相手ベンチに目礼しながら、
視線をバックネット裏に流した。
ビデオカメラの三脚を片付けているアキコと眼が合った。
気がついたアキコが、こちらにまた小さく手を振った。
(全く、しょうがねぇなぁ) 返事のつもりで、安部も右手をちょっと振った。
ふと隣を見ると、仲村が怪訝そうにこちらを見ている。
安部は、照れ隠しのつもりで思わず、アゴを撫でた。
表情を窺う仲村の口から、まさか、という言葉が漏れたような…。
(了)
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