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華の声が遠くに聞こえる。 寝惚け眼のあたしを起こす。 返してもらっていた鍵は色々と不便だと分かったから、 もう一度、華に渡した。 「もうドッグタグには付けないでね」 それが約束。 愛してると繰り返す相手に、 同じだけを返してあげられない自分が、少し嫌になる。 人生を儚むほど狡い性格はしてないつもりだけど、 逃げたい、と。 逃げられない、と。 逃げたくない、が交差する。 軽いジレンマ。 あたしはやっぱり、冷たくて、 自分を遠くから眺めているような感覚がある。 少しずつ、世界を広げようと、 話の合う人たちとの約束をしてみたりとか。 華と、 触れ合う距離を置くことで、 その存在を確かめてみたりとか。 何かしようと、いろいろ足掻く。 きっともっと考えないと、あたしは駄目な人間になっていく。 対等にならなきゃ、まだ何も言えない。 空いたままの薬指が、 あたしを少し怯えさせる。 ときどき、ぽつりとお手紙をもらったりして。 返事を書こうかと思うのだけれど、 なかなかタイプが進まないので、こんなところで「ゴメンナサイ」を。 読んでます、ありがとう。 意地っ張りなのはお互い様なのかな、とお名前を見て思ったり。 命に関わるほどの大病でもないけれど、 生活していくのに不便な体質であることを理解して、 うまく付き合っていこうとがんばってます。 歩いていくと決めた道の先に、 出来れば光があることを願って。 あなたにも、あたしにも。 名前も知らない人たちにも。
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