仕事中、 彼から電話とメールが来てた。
緊急だって。 電話が欲しいって。
そんな電話が入っただけでも 心臓バクバクだったのに、 かけてみて発覚した事実にまたびっくりだった。
終電乗り過ごして タクシー代もないから、 とりあえずあたしの家の最寄り駅で降りてみた。 って。
あたしは仕事中。 帰るまであと2時間はあった。
でも、 行かなきゃ。
呼ばれたもん。 あたしを必要としてるもん。 送っていってあげなきゃいけないもん。
「鍵あったらお前の家入ってたんだけど、 家に置いてきちゃったからさ」 って。
え?何? あんた結婚してるのに まだ元カノの合鍵持ってるの?
「捨てなよー」 笑いながら言うのが精一杯だった。
何を考えてるかわからない。
結局あいつは、 あたしをどう思ってるのか どうしたいのか、 どこまで求めてるのか。
結局ちゃんと迎えに行って。 家の近くまで送った。 家の前までは送らなかった。 家族3人で慎ましく暮らしてる家なんて 見たくもない。 知りたくない。
彼の家に着きそうになったとき、 「エッチしよ?」
…。 何。 死んじゃえ。
でもそれに応じてしまうあたし。 だって、 少しは期待してたもの。
でも言えた。 「こうゆう関係には戻りたくなかったんだけど」
彼は笑ってた。
笑わないで。 あたしの好きな笑顔で。
「家に帰ってからすればいいじゃん」 「やだ」 「やだ!?」 「お前としたい」 あたしの名前を呼んで、 そう言ってた。
嬉しかった。 彼の口から出た、 あたしの名前。
終わって帰るとき、 キスしてくれて、 昔みたいに言ってみた。 「なんか忘れてない?」 彼は一瞬悩んでたけど、 すぐ思い出してくれて、 あたしの頭を撫でてくれた。
「懐かしい」
そう言いながら。
体の関係なんていらない。 浮気相手程度ならまだしも、 不倫相手なんてめんどくさい。
ただ、 あなたに頭を撫でられたい。
今回は、前回から2ヶ月空いた。 次会うのは半年後。 そうやって 距離を置いていこう。
戻りたくない。 彼に依存してたあの頃には。
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