別に彼女じゃないのに。 言い合って喧嘩して泣き出してしまった。
あたし、何やってるんだろう。
原因はあたしだろう。 そしてふてくされたあたしに彼が怒った事から 喧嘩が始まった。
ふてくされてた訳じゃないよ。 飲んでるときは友達も居たから、 普通に楽しい時間過ごしてた。
だけど友達が席を外したときの 二人きりの間が重くて。
一番年下だった彼に 飲ませすぎちゃったから、 あたしと友達は次の日1日中オフだったけど彼は仕事だから、 あたしは申し訳なくなって 「タク代渡すから帰る?」って聞いたの。
そしたら二人になったとき怒られた。
「なんであんな風に言うの!?」って。 「飲みに誘われた時点でこっちにだって帰る気ないことくらい分かるでしょ!?」って。 なんかモヤモヤしてたあたしは彼にぶちまけたんだ。 「…一緒に居たいと思われてるかどうかわかんないもん。 なに考えてるかわかんないもん」
そしてついに言っちゃった。 「あたしは…好きだよ」って。
彼の答えは、ある意味想像してたものだった。 「よくわからない…。 というか、恋愛とかまだ良くわかんない」 って。
何となくわかってたよ。 あたしはそこまで疎くない。
「でも仕事中は意識するし、意識したら話せなくなるし…」
ごめん、 何を言われてももう響かない。 なんか、疲れちゃった。
あたしが背中を向けると 彼はあたしの本名を呼ぶ。
何かが切れて、あたしは叫んだ。 「都合いいときだけ名前で呼ばないで!!」
…くだらない主張。 本当は呼ばれたいよ。 仕事とか関係ないんだって思いたい。 だけど、あたしに対しての気持ちがはっきりしないんなら これ以上あたしの中に入ってこないで。
「俺だって普段から名前で呼びてぇよ…」
そんな風に言われても、 好きになると仕事がツライから。 好きになったら、また不幸を背負うのは 目に見えてるから…。
子どもじゃないけど、 そこまで強くない。
聞きたくない話も、 聞いた。 過去の恋愛もだけど、恋愛の話は聞いておきたかったから平気。 そうじゃなくて、そうじゃなくて…。
驚かなかったけど、この世界はやっぱり怖いなって思った。
彼はずっと背中から抱きしめながら話してくれた。 お酒の勢いで泣き出したあたしも 何とか落ち着いたよ。
一緒にお風呂入って、 そのままいつものように抱かれる…つもりだった。 彼を先にお風呂から上げて、 ひとりでボーっとしてて思った。 「少し頭冷やさなきゃ」って。
ベッドに戻ったあたしは 睡魔が襲ってきた事もあって。 キスしてきた彼を遮って抱きつくのが精一杯だった。
「エッチしたいって言ったら?」って聞かれて。 「…会うたびそうなるのが嫌なの」って答える。 基本的に仲直りエッチは嫌い。 虚しいだけだから。
彼は、あたしから離れて寝た。 あたしは自分の言葉と彼の行動に少し傷付いて感じた。
所詮あたしは悲劇のヒロインを演じたいだけ。 元彼はよくわかってたね。 久々に胸の奥に痛みを感じた。 あぁ、あたし、恋してたんだね。
そして思ったの。 「しばらくあたしから誘えないなぁ…」って。 あと半月くらいは会いたくても会えないだろう。 ううん。 きっとこの喧嘩で彼はあたしに対して何も感じなくなるだろう。 こんな面倒な女は嫌よね。 好きな女ならまだしも。
きっと…会うのは最後。
メールの数も激減するだろう。 好きになれないよ、これ以上。 好きになっちゃいけない…。
会うたびに知る彼のたくさんの姿に一喜一憂して。 元彼も持ってた傷。 彼はそれ以上に弱いかもしれない。
元彼と彼の全く違う点。 それは、 人の心の痛みがわかること。
いい子だね。 自分のこと弱いと思ってるんでしょ? だったらあたしに何が出来る?
これ以上近付くなって言われるんなら… あたし遠くから見守ってるから。
せっかく好きになれたと思ったんだけど。 あたしはまた自分からこの恋を壊していく。
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