Skipper Johnの航海日誌

2007年07月03日(火) 「美徳の経営」 野中郁次郎著

「美徳の経営」野中郁次郎著(NTT出版)を読みました。

さすがに野中教授の本だけあって読み応えがありました。

・美徳とは、共通善(common good)を志向する卓越性(excellence)の追求であるといえる。
・日本企業の知の背景には、そうして内部に歴史的に培われていた「美徳の実践知」があった。それは技術においても人間的な要素や「場」を根幹に置く志向性を持っていた。
・賢慮(けんりょ・フロネシス)は、個別具体の場においえその本質を把握しつつ、同時に全体の善のために最良の行為を選び実践できる智恵である
・事業価値=「長期的視座にもとづいて知識資産が生み出す価値」を「社会的に妥当な資本コスト」で割り引いた現在価値の総和

などなど、日本的な経営にバックボーンを与えてくれるような示唆に富む内容で、日本的な経営もまだまだいけるぞ、と勇気が出てきました。

野中郁次郎は現在一橋大学の名誉教授で、英語で書いた「知識創造企業」(東洋経済新報社)が全世界でベストセラーとなりました。80年代の日本企業の繁栄は「暗黙知」の集積と活用が源であったという論文です。これ以外に、太平洋戦争における日本軍の作戦を研究した「失敗の本質」(中央公論社)では、日本軍の敗因を徹底分析し、今でも多くの大手日本企業に残るガバナンスや人事制度などの問題を浮き彫りにしていて、経営に携わる方にはぜひ読んでいただきたい本のうちの一冊です。

「美徳の経営」の中で野中教授が興味ある引用をされていたので転載します。

ウィンストン・チャーチル(元英国首相、ノーベル文学賞受賞)
「悲観主義者はすべての好機に困難を見るが、楽観主義者はすべての困難に好機を見る。」
「A pessimist sees the difficulty in every opportunity; an optimist sees the opportunity in every difficulty.」


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Skipper John