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■ 眩し過ぎて近付けない
わたしは本当に無力で。
いいえ、人はみな無力です。
それらを認識して、 初めて何か自分に出来る事をしようと 思うのです。 それでも役に立たないことが、 多くあります。
わたしは様々な経験の中で、 人間が無力である事を充分認識して いるつもりです。
初恋の人が亡くなった時も、 冷たくなっていく手を握り締めて、 ただ泣く事しか出来ませんでした。
若くして結婚し、 大好きだった優しい夫が亡くなった時も、 呆然とそこに立ち尽くし、 そして娘を抱き締め幼い彼女に、 突然の父親の死をどう説明するかだけを 考えていました。
看護師になって、 小児科に配属され必死だった当時。
わたしは自分の娘が高熱を出しても 仕事に出向き、 結果彼女の病態を悪化させ、
大事な大事な娘
を
亡くしました。 短い結婚生活の中で得た、 夫が残してくれた大切な忘れ形見でした。
「 ママ、泣かないで。わたし大丈夫だから。 泣いちゃ駄目だよ。 わたし、パパのところに行くね。 ママ、大好き。ママ、ありがとう。」
幼い彼女が、酸素マスクの中で 苦しい呼吸を我慢しながら、 残してくれたやさしい 言葉でした。
死亡時刻を医師から伝えられても、 わたしはそれを受け入れられず、 彼女の亡骸を抱き締め、 必死に語りかけ温めました。 名前を呼び続けました。 彼女が大好きで、 何度も読んでとせがむ為、 暗記してしまった絵本を 耳元で聞かせました。 やわらかく色素の薄い髪の毛を 撫で続けました。
幾度も 幾度も・・・。
それでも
彼女は冷たくなっていくのです。 目を開けてはくれないのです。 あの笑窪の出来る笑顔を見せて くれないのです。
2007年06月01日(金)
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