舌の色はピンク
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自分はよくぞホモ男に育たず 正常な性愛者になれたなぁと時折ゾッとする。 いかんせん環境が危うかった。
中学のときは男友達で集まって遊ぶのが常だった。 とくに仲の良かった友達(仮にΣと呼ぶ)とは ほとんど毎日のように遊びほうけていた。 たいていはサッカーボールを使って外で走り回り、 雨の日には僕の部屋にて二人してごろごろするのが定番だった。
中学生になったごときで子供を卒業し 大人気分となっていた当時の僕らの間では 小さいころにしていた遊びをするのが流行っていて、とくに、 寝転がって足で相手を持ち上げぐるぐる揺らす 「飛行機」と称していた遊びをよくしていた。
忘れもしない中一、六月。雨の日。 僕が寝転がったΣの体の上におもむろに覆いかぶさり いつもどおりに足で持ち上げられて「飛行機」を堪能した数秒後 いつもどおりに最後はどすんと落ちて 体が重なり合ったときに目に入ったのが、 動物の交尾の模様を取材したドキュメント番組を放映しているTV画面だった。
そこから一体どういう流れになったのか、 あんなに夢中になっていた「飛行機」は寸刻も待たずして廃れきり、 代わりに世にも恐ろしい新たなる遊びが産声をあげてしまった。
解説するのもおぞましい。
一人がうつぶせに寝転がり、同じ体勢でもう一人が上に重なり、 たった一つのシンプル極まりないフレーズを言い放つのだ。
「交尾!」
叫ぶ。振る。揺れる。笑う。
「交尾!」「交尾!」「交尾!」
わめく。よがる。もだえる。わらう。コービ! わらう。
こんな楽しい遊びに飽きる日が来ることなんて全然信じられなかった。
今思えば狂気の沙汰ながら、 以来梅雨が明けきるまではどえらいブームとなって 僕たちをアブノーマリーに走らせていた「交尾!」は、 その異常性を僕らに気づかせぬままにいつの間にか消え失せていった。 曇天を退けて現れた輝かしい太陽とともに、 夏がすぐそこで顔を覗かせていたんだ。
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