悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年09月05日(金) 1、悲哀 2、春の月

悲哀

1、かなしさは、ひとりで生きてゆくこと
  友もなく、恋人もなく、家族もなく、
  さびしい白い雲のように、
  風のままに、流れてゆくこと

2、あたたかな日当たりは、どこにもなく、
  冷ややかな日陰は、暗く、深い
  30年まえの写真を、引き伸ばして、
  忘れていた人を、じっと見つめる
  しかし、サヨーナラの一言もなかった、婚約者に、
  思い出などない
  あるとすれば、自分の悲哀だけだ

春の月

  楽聖でさえ、そのさびしさは生涯、
  理解されることはなかった
  まして敗者のそれなど、闇夜の影に等しい

  春の月夜、咲き誇る桜はなまめかしい
  季節は早足で廻る

  花ざかりの山上に、青白い球形の月が、
  天空に昇りつめて、青明な光を、
  しずかに放っている、しずかに

  さびしさは生涯、消え去ることはない

  にほんブログ村→文集/「生きていることの哀感」2014・06・13〜


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