2006年03月14日(火)...ホットチョコレィト

 眼の前のカップルは何時の間にかいなくなっていて、代わりに雪が降っていた。カップを口元に運ぶと、縁に付着した泡が唇に当たって、ざらりとした感触を残す。喉を厭な冷たさとぬるりとした甘さが伝って、気持悪い、とひとりごちた。
 テーブルに出来た水滴の輪を指でつつ、となぞりながら、混み始めた店内の会話に呑まれてゆく。今、世界は酷くざわついていて、溢れる言葉には総て宛てがあるのに、ただひとつとしてこの手元に届くものはないのだと、そう、唐突に思った。

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