2009年11月26日(木)...僻案

 酷く苛々する。久々の自室に、篭城しながら思う、何故、何故、何故。薄い壁の向こうに溢れる謗り罵り誹りの言葉が流れ込んで仕舞わない様に、ドアの隙間をガムテープで塞ぐ。べりべりとロールから解ける其れを無心に引き伸ばして、ベッドの下に隠した幸福をずるずると引き摺り出した。缶に詰まった其れはかしゃかしゃと乾いた金属音を鳴らして、愉悦を提供する機会を待ち侘びている。
 銀色のシートにピンクの、星模様の愛らしさが効用の加減を物語って、もっと深く、もっと強く、もっときつく、囚われた思考が選定を増やしてゆく。ぱき、と心地良い音を立ててシートから剥がされた黄色や白の夢は、溜め息が乾かぬ間に食道を通過して、胃袋の中へと吸い込まれていった。
 胃が水分を拒んで、少しだけ気持ち悪い。唇が水気を失って、喉が自棄にちりちりとする。カーペット掌を付いたまま、ずりずりと進む。指に絡まった髪が不快の色をより一層濃くしてゆく。這い蹲ったまま、苛立ちが響く頭に冷たさをぶち付けた。額がひりひりとして、頭を擡げる力も無いことに、気付く。
 眼の前には、溢れる光。きらきらと弾ける蛍光色の粒が拡散と収縮を繰り返して、心臓を締め付けた。痛い、痛い、痛い、痛い。脳味噌がぐらぐらする。冷たい頭と手足に反して、焼けるように熱い臓物が眼の裏を赤く燃やした。もう、如何でもいい。疲れた。

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