2004年07月31日(土)
なんかのCMがアダルトビデオ(海外モノ)みたいだ、なんて書いてる場合じゃなかったんだ。 だって、私の愛する日本映画『男はつらいよ』のおいちゃん役、下条正巳さんが亡くなったんだもんなあ。
おいちゃんは3人の俳優が演じており、初代は森川信、2代目は松村達夫、そして3代目にして最長おいちゃん記録保持者・下条正巳。 下条アトムのおとーちゃんであることはご存じね。
一番おいちゃん役が長かったからというわけでなく、下条正巳はおいちゃんにピッタリだったと思う。 ★実直に生きる庶民 ★実直に生きてきた庶民だからこそ滲み出る気品 そんなものが真っ直ぐにこちらに伝わってくるようだった。 「どうせおいらは貧乏人さ、へっ」みたいな開き直りがなく、貧しても鈍しない、さもしさがない、きれいな庶民像がおいちゃんから見える。
寅次郎に会いに”とらや”(のちに”くるまや”)を訪れるマドンナに 「きょうはどうか寅の顔を立てて、とらやの田舎料理でも召し上がって行って下さい。」と夕食に誘うおいちゃんの上品なこと!! うちでお出しする料理は所詮田舎料理ですと言いながら、もてなすおいちゃんの気品は、うまい言葉が見つからないが市井に生きる民の気品。
森川信は元々喜劇の舞台を踏む俳優。 不肖の甥・寅次郎のことを想い 「あ、また頭痛くなってきた。まくら、さくら持ってきてくれ。」 の、寅さんファンなら知らない人はいない「まくらとさくら」の台詞は確かに面白いが、おいちゃんに喜劇性はそう必要ない。 笑いとは無縁のところにいるのに、一所懸命だんごを作り、寅次郎を心配し、毎日精一杯生きているだけなのに、そのギリギリさが端で見る者の笑いを誘ってしまう。おいちゃんの笑いはそういうところだと思うが、森川信はなまじ喜劇役者ということがいわば仇になり、”そこまでおかしいおいちゃんは要らない。笑いは渥美清だけでいいかも・・・”という感を見る側に抱かせてしまう。
松村達夫は実直に生きる庶民というより、実直清貧の孤高学究翁みたいな感じ。 柴又で毎日だんごこねているイメージじゃない。
やっぱりおいちゃんは下条正巳だったんだ。 御前様は笠智衆、タコ社長は太宰久雄、寅さんは渥美清、それ以外の配役は考えられないのと同様、おいちゃんは下条正巳だったんだ。
合掌
|
|
|