| 2007年07月31日(火) |
”いつ結婚するの?”と言わせないためには |
先日、僕はある先輩の歯医者K先生と話しをする機会がありました。K先生は僕が尊敬する先輩の先生の一人なのですが、歯科治療に対する知識、技術の習得に常に貪欲で、非常に優れた歯科治療を行う先生です。専門家である僕からみても、これは敵いそうにないなあと思うくらいの高度なレベルの診療をされるのです。そんなK先生と話をすると僕はいつも新鮮な発見、驚きを感じ、非常に有意義な時間を過ごすことができます。 そんなK先生ですが、世間話をしているとこんなことを言われたのです。
「今もって周囲から“いつ結婚するんだ?”と言われるんだよ。うっとおしくて仕方が無い。」
K先生の気持ち、僕はよくわかりました。 かつて、僕も20歳代後半の独身時代、周囲からは何かにつけて言われたものです。 「結婚はいつするんだ?」 「将来の伴侶はもういるのか?」 「彼女はどうなんだ?」
20歳代後半という年齢は、男にとっても結婚適齢期みたいなところがあるのでしょう。独身であった僕に対し、周囲の親戚や知人、先輩から会うたびにこのようなことを言われたものです。言う方はそれなりに気を遣っているつもりなのでしょうが、言われる当人としては“小さな親切、大きなお世話“でした。どうして、いつも同じようなことを言われ続けなければならないのだろうかと思いながら、相手に失礼にならないように適当に返事をしていたものです。
この結婚しないか合唱は僕が結婚した30歳になるまで続きました。今の嫁さんと出会い、結婚するまで続いたわけです。 “これで結婚のことをとやかく言われなくて済む”と思っていると、今度は別の“小さな親切、大きなお世話”が待っていました。それは、“子供はまだか?”
「ぼちぼち子供のことを考えているんじゃないですか?」 「お父さん、お母さんはお孫さんの誕生をお待ちでしょう。」 「子供はまだですか?」
僕ら夫婦は、子供が欲しいとは思っていましたが、子供がいつ誕生するかどうかというのは考えていませんでした。夫婦同士、互いに“気長に考えていこう“と言っていたのですが、周囲ではそんな僕ら夫婦の気持ちは理解してくれなかったのです。 会うたびに、“子供はまだか?”と言われるばかり。 こんなことでは落ち着いて子作りもできやしない!小さな親切、大きなお世話の周囲からの雑音に閉口したものです。
幸い、有難いことに今から9年前、上のチビが誕生しました。五体満足に健康なチビが誕生したことは非常に喜ばしいことでした。夫婦で初めての赤ちゃん育てが始まりました。当初は初めてだったものですから試行錯誤の連続でしたが、何とか慣れてきたと思っていた時期に、僕は新たな雑音が聞こえてきました。
「二人目はまだか?」 「子供が一人だと寂しいのじゃないですか?」 「子供は一人よりも二人の方が賑やかですよ。」
せっかく子育てにも慣れ、子供も順調に育ってきたなかでの一言。本音としては、もう一人子供が欲しいとは思っていましたが、それは周囲からとやかく言われる筋合いではありません。それなのに周囲から何を言うのだという思いが強くしたものです。
結局、この雑音は下の子供が誕生するまで続きました。 さすがに、3人目の子供はどうだ?という雑音は聞かれませんでしたが、今度は子供に関して新たな雑音が聞こえてきました。
「幼稚園はどこに通わせるの?」
「小学校はどこの小学校を考えている?地元の公立、それとも私立。」
おそらく、この手の雑音は、子供が成長し、中学、高校、大学へ進学する時点でも生じるでしょう。大学へ進学すれば、その後は、就職のこと、挙句の果てには子供の結婚、孫の誕生に至るまであるのかもしれません。キリが無いということです。
これら“小さな親切、大きなお世話”に対してどう接すればよいのか?周囲の雑音に惑わされず自分を失わずにマイペースでいくことが一番なのでしょうが、雑音を完全に消し去るには結果を出すしかありません。 すなわち、“結婚がまだか?”と言われれば、結婚をする、 “子供はまだか?”と言われれば子供を作る といった具合です。
他人の不幸は蜜の味なんてことを言いますが、世間では親切面をして他人の動向に関心がある人が多いのです。そんな人を黙らせるには結果を示すしかないのが現状。 結果を出せない人に対しては黙って温かく見守るのが本当の愛情であり、思いやりだとは思うのですが、それができない人が多いのは悲しいことです。
先輩のK先生にも同様のことを言いました。賢明なK先生曰く
「そのとおりだよね。正直言って、僕も結婚したいのだけど、相手に恵まれなくてね・・・。僕の目の前にこれだと思った女性が出現して結婚するまではうっとおしいことが続くね。少なくとも、そうさんは結果が出ることを気長に待っていてよね。」
K先生、僕はいつまでも吉報を待っていますよ。
| 2007年07月30日(月) |
参議院議員選挙 歯科職域代表候補当選 |
昨日、第21回参議院議員選挙が行われ大勢が判明しました。結果はこちらにあるように与党である自民党の歴史的大敗に終わりました。選挙前から年金問題や閣僚の問題発言、自殺といったスキャンダルの連発などから自民党には逆風が吹いているとマスコミを中心に言われていましたが、結果もその逆風を裏付けるものとなり、自民党は公明党を合わせても過半数を大きく下回る結果となり、政権運営が非常に不安定になる可能性が高くなってきました。
そんな中、当選者の中に歯医者がいました。その一人が石井みどり氏です。石井みどり氏は、広島県の小児歯科医だったのですが、今回の選挙で自民党公認比例代表候補として立候補し、自民党に対する逆風にも関わらず見事に当選しました。
実は、石井みどり氏は日本歯科医師会の政治団体日本歯科医師連盟(日歯連)の職域代表候補でありました。日本歯科医師連盟は中医協を舞台とした汚職事件を起した3年前の参議院議員選挙では候補者を立候補することができませんでした。今回の選挙ではただ一人日歯連の職域代表の議員が改選に当たっていました。日歯連は3年前から今回の参議院選挙の準備を始め、今回改選する現職議員を含め広く候補者を募り、検討した結果、石井みどり氏を日歯連の職域代表候補として擁立することにしたのです。
石井みどり氏は2年前から全国各地の歯科医師会をまわり続け、自らの当選のための選挙協力を訴えてきました。今の時代、無党派層が選挙の行方を決めることが言われていますが、日歯連の職域代表候補は知名度がありません。当選するためには昔ながらの組織票に頼るしかありません。現在、歯科医師は全国に10万人近くいます。今回の参議院議員選挙、比例代表の当選投票数は20万票だと言われていましたので、全国に散らばる歯科医師が自らだけでなく投票権のある家族に投票を呼びかければ充分に当選するであろうというヨミがあったのです。
実際のところは、かなり厳しいところがありました。石井みどり氏は自民党の公認候補でもありました。昨年の医療保険制度のマイナス改定の影響から、全国の歯科医の間では政権与党に対する風当たりが相当強いものがあったのです。石井みどり氏は医療、社会福祉の政治に歯科医師が関与するためには与党候補である自民党から出馬しなければ意味が無いと訴え、日歯連もサポートしてきました。
今年になってからは、石井みどり氏は自らの歯科医院を閉院し、退路を断って全国各地を2度3度くまなく回り、歯科医師会を中心に自らへの指示を訴えてきました。また、日歯連も非常な危機感をもって全国各地の下部組織に石井みどり氏への指示を徹底してきたのです。
その甲斐あってか、今回の選挙では石井みどり氏は逆風が強かった自民党候補であったものの当選することができました。歯科医師会に所属する歯科医師の組織票をまとめあげた結果だろうと思います。
今回の選挙では医師会の職域代表ともいえる現役議員が落選しています。例えば、医師職域代表議員。医師の数は歯科医師のほぼ3倍ありますから、医師の力を結集すれば組織票によって当選できたはずなのですが、それができなかったのです。組織票をまとめる難しさを物語っています。 日歯連は相当な危機感をもって時間をかけて今回の参議院議員選挙の準備をしてきましたが、そこまでしないと一人の議員を職域代表として国会へ送り込むことができないものなのです。今回も様々な団体の職域代表候補が立候補しましたが、多くが落選だったことを考えると、組織票を頼りにした選挙の難しさを感じます。
職域代表が良し悪しの判断は僕にはわかりませんが、同じ歯医者として石井みどり氏が国会議員として当選したことは、素直にうれしく思います。これから6年間、より良い歯科医療の実現のため、国政の場で汗をかいて頑張って欲しいと思います。
| 2007年07月27日(金) |
女性の方が長生きの理由 生理との関係 一仮説 |
日本人の平均寿命、またまた過去最高を記録したようです。このニュースによると、厚生労働省が2006年の日本人の平均寿命を発表したそうで、男性は79.00歳、女性は85.81歳であったそうです。2005年はインフルエンザの流行のせいで高齢者の死亡が増え、男女とも6年ぶりに前年を下回ったのですが、2006年は再び上昇したとのこと。 世界では、女性は22年連続長寿世界一。男性はアイスランドの79.4歳に次いで世界第二位だったそうです。
昨今、少子高齢化社会であることが言われていますが、高齢者の平均寿命増加は少子高齢化に益々拍車をかける結果になることは間違いないようです。 この平均寿命に関して、誰もが疑問に思うことの一つに男女差があります。常に女性の方が男性よりも平均寿命が長いという事実。世界的に見ても女性の方が男性よりも平均寿命が長い傾向にあるようですが、どうして女性の方が男性よりも平均寿命が長いのでしょう?いくつも諸説があるようですが、科学的なデータに基づく原因解明はまだのようです。
昨夜、地元歯科医師会で会合があったのですが、その席でもこの平均寿命の話が話題にあがっていました。特に、女性の方が男性よりも長寿であるのか、皆口々に意見を述べていました。その中で、ある先生の意見は興味深いものでした。
「女性の方が男性よりも平均寿命が長いのは生理の影響があるのではないかと思うよ。」
「まだ医学が進歩していなかった時代、体調が悪い時にしばしば行われたことに瀉血(しゃけつ)がある。瀉血とは体の中に溜まった悪い成分を血を出してしまうことにより健康を戻そうという発想が元だったんだね。瀉血療法というのは、古今東西行われてきた治療法なんだけども、今の医学に慣れている我々からみれば、瀉血ばかりしていると貧血になって体が弱ってしまうのではないかと思いたくなるよね。ところが、最近、この瀉血療法が見直されてきているんだよ。」
「例えばC型肝炎の治療。肝炎になると肝臓に鉄分が過剰に蓄積され、さらに肝炎を悪化させ、それが長引くと肝臓がんのリスクが高まるらしい。このリスクを下げるために月に1〜2回瀉血をすることにより鉄分の過剰蓄積を抑えることができ、瀉血療法開始後2〜3ヶ月後には肝細胞の変性や壊死、肝機能の改善が見込まれるらしいよ。」
「既にヨーロッパでは通常の医学的治療だけでなく、自然療法なる療法が取り上げられているらしいのだけど、リウマチやガンの患者さんに対し自然療法として瀉血療法、吸血療法が行われているんだって。」
「瀉血の意味合いを考えてみると、自然と瀉血を行う現象が人間にはあるんだよ。しかも、女性だけに。そう、生理だよ。女性は15歳頃から50歳頃まで約35年間生理がある。実際の生理を考えてみると、女性は一生の間に約7年の生理により体外へ血を出していることになるんだよね。生理って、生殖の目的があるのは言うまでもないんだけども、瀉血の発想から考えると、女性は15歳から50歳までの間に定期的に体の中に溜まった悪い成分を体外へ出しているとも考えられるんだよね。これが健康にどのようにつながるかはわからないんだけども、女性の方が寿命が長いという事実を考えると、生理の影響というのは意外と大きいのではないかと思うよ。」
生理の有無が男女の平均寿命の長さを影響するという仮説。まだ科学的な裏づけはないようですが、女性だけに見られる生理が平均寿命に与える影響に関しては、それなりに説得力があるように思います。
僕は男性ですから、生理はわかりません。けれども、周囲の女性の話を聞くと、生理時の体調、精神的な変化に悩まされることが多いとのこと。生理の時、女性は何かと大変なようですが、これも長生きするための自然現象だと思えば、生理の苦痛も少しは耐えやすいものになるかもしれませんね。
| 2007年07月26日(木) |
有名人口元チェック 大関琴光喜 |
昨日、テレビを見ていると大相撲の関脇琴光喜が大関に推挙されたことを伝えた伝達式の模様が放映されていました。何でも日本人大関の誕生は先に引退した栃東以来とのこと。最近の角界は、大関、横綱とも外国人力士ばかりだったため、久々の日本人大関の誕生なのです。 琴光喜が大関になったのが31歳3ヶ月ということで、これまでに大関になった力士の中では最年長昇進とのこと。早くから素質を見込まれ、将来の大関、横綱候補とまで言われた力士だっただけに大関への昇進はかなり時間がかかってしまったわけですが、その分、今後の活躍、横綱への昇進を期待したいものです。
さて、インタビューを受けている琴光喜の口元を見てみました。僕が最初に感じ、なおかつ一番の特徴だと思ったことは、琴光喜の下唇です。上唇の大きさに対し、下唇の大きさが大きいのです。通常は、上唇と下唇の大きさはほぼ同じなのですが、琴光喜の場合、下唇の大きさが圧倒的に大きかったのです。
“そうなのか?” と僕は思い、実際に琴光喜の歯を見て僕は納得しました。 それは、琴光喜が受け口だったからです。専門的には下顎前突といいます。下顎の骨の成長が著しく、上顎よりも下顎の方が顔面の前方へ突出してしまっている状態を下顎前突といいます。この下顎前突の場合、下唇も前に出ているために上唇の下側を被うようになりがちです。そのため、正面から見てみると下唇の大きさが上唇よりも大きく見えてしまうのです。
どうして下顎前突が起きてしまうのか?その理由はわかっていません。現在も研究が進められているはずですが、わかっていることは下顎前突の人は家族の中に同じように下顎前突である人がいる確率が高いことです。本人が下顎前突の場合、お父さんやお母さん、隔世遺伝でおじいさんやおばあさんといった人たちが下顎前突であることが多いように思います。下顎前突になるかならないかは、遺伝による影響が大きいように思えます。
この下顎前突を治すにはどうするか?成長期の子供で将来、下顎前突になりそうな場合は、あらかじめ下顎の成長を押さえる装置を装着して成長を抑えるようにし、口の中の歯の矯正治療を行います。 それでは、大人になってしまった下顎前突の人の場合はどうでしょう。この場合、歯の矯正治療と口腔外科的手術が必要となります。具体的には、先に術前矯正治療といって矯正治療を行い、ある程度歯が移動したところで、口腔外科手術を行い、下顎、場合によっては上顎も同時に移動させます。その後、術後の矯正治療を行い、下顎前突を治すのです。
下顎前突を治すというと、下顎だけを治療すればいいように思いがちですが、顎には歯がありますから、歯並び、かみ合わせも同時に治していく必要があります。そのため、下顎前突の治療には時間がかかるものなのです。 ちなみに、矯正治療は通常は保険診療ではなく完全な自費診療なのですが、下顎前突の治療を目的とした矯正治療、ならびに口腔外科処置は全て保険診療で治療することができます。
下顎前突の有名人としてはアントニオ猪木がいます。アントニオ猪木は自分の下顎前突の顎のことを質問された際、 「俺の顎は相手レスラーの攻撃の時に非常に役立っているんだよ!」と笑いながら自分の下顎を触っていたのだとか。自分の下顎前突をコンプレックスとせず、むしろ長所として、個性として捉えていたのが印象的でした。
遅咲き大関琴光喜ですが、これからは是非とも下顎前突の顎も自らのトレードマークとして活躍して欲しいものです。そして、大関に留まらず久しぶりの日本人横綱となって活躍することを期待しています。
| 2007年07月25日(水) |
付け届けは賞味期限切れ |
歯医者家業をしていると、時折患者さんから付け届けをもらう時があります。患者さんは自分が受けた治療に対する治療費を支払う義務がありますが、時として治療費を支払う以外に何らかの付け届けを持って来られる場合があるのです。
「先生、つまらないものですが、家族で召し上がってください。」 と僕に直接手渡す患者さんもあれば、受付で託けてくれる場合もあります。 僕はこれら付け届けは有難く頂戴することにしています。付け届けのある無しで患者さんに対する治療が変るか言われると、それはありません。どんな患者さんでも僕は同じ診療姿勢で治療に臨んでいるつもりです。 ただ、患者さんが治療費以外に何らかの付け届けを持って来られるということは、僕の治療に対しそれなりの気持ちを表しているものと思うのです。一種の好意だと思うのです。その好意を無下に断るということは、僕は忍びなく思うのです。
かつて、僕は某公立病院に勤務していたことがありましたが、その時は、僕は患者さんからの付け届けは辞退していました。その理由は僕が公務員であったからです。当時の僕は、人様の血税で成り立っている病院の医員でした。公僕の僕の一員であった僕は、病院から頂く給料以外に受け取ることは遠慮していたのです。 今仕事をしている歯科医院は、公立の病院ではありません。零細ではありますが、僕個人が経営をしている歯科医院です。患者さんから頂く付け届けに対しては、一種の僕に対する評価でもあると思い、有難く頂戴するのがいいのではないかと考えています。かつて、僕は付け届けを受け取ることを悩んでいたこともありましたが、今では割り切って付け届けを頂くようにしています。
それでは、頂いた付け届けはどうするか?基本的に付け届けは食料品ですので、家族の分とスタッフにお裾分けするようにしています。付け届けは僕宛ということではあるのですが、僕だけで独り占めするわけではありません。僕が歯科医院を代表して受け取るという意識の元、家族とスタッフに分けているわけです。
そんな付け届けですが、先日、僕はある患者さんから頂きました。
「これは貰い物ですが、よかったらご賞味下さい。」
僕はいつものように頭を下げ、お礼を言い受け取りました。 診療終了後、付け届けを開封させてもらいました。品物にはある紙が貼ってありました。 紙の上には下のような文字がかいてありました。
お中元 ○○
○○というのは付け届けを下さった患者さんの名前ではありませんでした。“貰い物”という言葉のとおり、患者さんが他の人から頂いたお中元をそのまま僕に持ってきたのでしょう。
“本当に貰い物だったなあ”と思いながらも中を確認すると、中身は明太子でした。明太子は僕の好物の一つでもあります。 “食事の際、これでご飯が進むなあ”と思いながら何気なく明太子のパッケージを見た僕は思わずある表記に目が行きました。その表記とは賞味期限。
賞味期限 平成19年○月○○日
付け届けを頂いた日は、賞味期限から一週間以上過ぎていました。
う〜ん・・・・・・・・・・・・・・。
このような場合、どのように考えればいいのでしょう? 患者さんに悪気があるようには思えないのですが、昨今の食べ物の品質管理問題を考えると正直言って、僕は頂いた明太子を生で食べる自信はありません。スタッフに御裾分けするというのは論外です。結局、明太子は焼いて食べるしかないのかな?
何とも複雑な気持ちになってしまった、歯医者そうさん。
皆さん、何か付け届けをする場合、賞味期限には充分に注意しましょう。必要以上に頂いた人を悩ませることは失礼に当たりますからね。
「歯ブラシの毛は硬いのがいいのでしょうか?」 歯科医院に来院される患者さんからしばしば尋ねられる質問です。歯ブラシの毛は、歯ブラシの最も重要なパーツですが、患者さんの中には意外と無頓着な人、無関心な人が多いように思います。
歯ブラシの毛は硬いものから柔らかいものまであります。ある会社の歯ブラシでは数種類の硬さの歯ブラシの毛が用意されており、それぞれ、患者さんの口の中の症状に応じて選択できるようになっています。本来、患者さんの口の中の状態に合わせて歯科医院でどの歯ブラシが適切なのか確認してほしいのですが、僕の今までの経験から、どんな歯ブラシの毛の硬さが良いのか書いていきたいと思います。
まず、歯ブラシの毛が柔らかいものは、基本的に歯周病に罹っている患者さんに適しているといえるでしょう。歯周病に罹っている患者さんの歯肉は少し歯ブラシで触れただけでも血が出やすいもの。けれども、血が出やすいからといって歯磨きを怠っていると、歯周病は進行し、血がより出安くなり、口臭が伴います。挙句の果てには歯が動揺し、抜けてしまう結果となります。 歯周病は、歯に付着する歯垢が原因であることが科学的に証明されています。歯磨きの仕方により歯周病の進行を止まるかが決まるといっても過言ではありません。 歯磨きの際、なくてはならない道具が歯ブラシであるわけですが、歯周病の患者さんの場合、使用する歯ブラシの毛が硬いと歯垢を除去するよりも歯肉を傷つけてしまいます。歯肉に傷をつけずに歯についた歯垢を取り除くためには、柔らかめの毛のある歯ブラシを使用し、歯磨きを丁寧に行う必要があります。
ここで問題となってくるのが、歯ブラシの毛の柔らかさに対する違和感でしょう。歯ブラシの毛が柔らかいと、“コシがない”“磨いた気にならない”と訴える方がいるものです。その疑問に対して、僕はこのように答えます。 “問題ありません”と。
某歯科大学の歯周病の研究者の調査で、毛が硬い歯ブラシを使用した人と毛が柔らかい歯ブラシを使用した人の歯垢の除去具合を調べた研究があるのですが、結果は同じだったのです。一見すると、毛が硬い歯ブラシの方が歯磨き効果が高いように思うのですが、実際のところは柔らかい歯ブラシと同じくらいの清掃効果だったのです。
愚考するに、歯磨きの場合、歯の汚れを取るポイントは歯ブラシの毛の硬さ、柔らかさではありません。それよりも歯磨きにかける時間が大切です。歯磨きが出来ていない、歯周病の患者さんの場合、実際に歯磨き時間を計測してみると1分も罹っていないものです。一回の歯磨きに1分以内しか時間をかけていないようでは時間が少なすぎます。 僕は患者さんに対し、一回の歯磨き時間の目安として最低ボクシングの1ラウンドを目標にするよう指導しています。すなわち、3分以上です。3分という時間、意外と長いものです。実際にボクシングの試合を見ていると、1ラウンドの攻防というのは非常に濃いものがあるのではないでしょうか?ついつい、時間を見ているとまだ2分しか経過していないなんて覚えがある人は少なくないと思います。 実際に自分が1度の歯磨きに要する歯磨き時間を計ってみてください。3分に満たない場合は、歯磨きが不十分です。僕の歯磨き指導は歯磨きに3分以上かけているかどうかを重要視します。 3分以上の歯磨き時間をかければ、歯ブラシの毛の硬い、柔らかいは関係ないものなのです。どちらのタイプの歯ブラシも充分に歯についた歯垢を取り除くことができます。しかも、歯肉を傷つけないという利点を考慮すれば、歯ブラシは毛の柔らかいものを選択した方がいいと思うのです。
実は、歯肉が健康な人、すなわち、歯周病に罹っていない人の場合の歯ブラシも同じことがいえます。歯肉を傷つけたり、必要以上に歯を傷つけないためには、歯周病で無い人も柔らかめの歯ブラシを使う方がいいと僕は考えます。
“歯ブラシの毛は硬いのが好き!“という気持ちはわからないではないのですが、歯ブラシの毛に関しては柔らかいものを勧めたいと思います。但し、具体的にどのような歯ブラシが合っているかどうかは、かかりつけの歯医者さんで診てもらった方がいいでしょう。
入れ歯というと何か中性的なイメージがあるかもしれませんが、入れ歯にも性差というものがあります。入れ歯を装着する人が男性であれば男性風に女性であれば女性風に作る必要があります。
それではどうやって男性風、女性風に入れ歯を作っていくのでしょう?それは人工歯に鍵があります。人工歯の中でも前歯の人工歯にポイントがあります。
前歯の人工歯の形は人の輪郭の形に相似します。入れ歯を装着する人の顔が卵型であれば、人工歯も卵型にちかい形状のものを、角ばった顔の形であれば、人工歯も角ばった形のものを選択する必要があります。そもそも、人工歯にはいくつもの色、形のものが用意してあり、患者さんの輪郭や色によって最適と思われるものを選択することができるのです。 当然のことながら、入れ歯を装着する患者さんが男性であれば、男性風の人工歯を用意します。歯の大きさはおおきめで角ばっているような形の人工歯を選ぶことが多いです。一方、患者さんが女性の場合、人工歯も角がとれた丸みを帯びた人工歯を選びます。 こうした前歯の人工歯を適切に選ぶことにより、入れ歯は男性的にも女性的にも作り上げることが可能なのです。
最近、この入れ歯に関して、僕は患者さんからある指摘を受けました。それは、入れ歯をはずしている時に保管する保管箱についてです。 これまで、うちの歯科医院では下のような入れ歯の保管箱を用意し、患者さんに配布していました。
よく入れ歯をはずして保管する場合、コップの中に水を浸して保管する人がいますが、悪くはないとは思うのですが、入れ歯を使用していない他人からみるとどうもグロテスクに見えるきらいがあります。また、入れ歯を保管しているコップは何かの拍子で倒れてしまったり、割ってしまったりする可能性もあります。 このようなことを防ぐために、入れ歯には専用の保管箱というものがあります。入れ歯の大きさに合わせて作られたプラスチック製のものです。蓋を開け閉めできるようになっています。これであれば、入れ歯は外から見えませんから、他の人が入れ歯に対して違和感を抱くようなこともありません。また、入れ歯を密閉したプラスチック容器の中に保管しますので、保管箱を倒したり、落としたりしても入れ歯に傷がつくようなこともありません。
この入れ歯用保管箱ですが、先日、入れ歯を作った女性患者さんに勧めたところ、ある指摘を受けました。
「先生、入れ歯用保管箱はいいとは思うのですが、他の色のものはあるのですか?主人の入れ歯用保管箱が水色ですから違ったものが欲しいと思いまして。」
鋭い指摘でした。正直なところ、これまでうちの歯科医院では入れ歯用保管箱は水色のものしか用意していなかったのです。水色の入れ歯用保管箱が一種類あれば、男女の患者さんの区別なく事足りると思っておりました。 ところが、入れ歯を装着する人は家庭の中で一人だけとは限りません。複数の人が入れ歯を使用しているケースも多々あります。そのような人たちが同じ入れ歯用保管箱を使っている場合、入れ歯用保管箱に名前を書くだけでは区別しにくいところもあるかもしれません。
また、それよりも、僕が改めて患者さんの指摘で気づかされたことは、入れ歯用保管箱にも性差があってしかるべきではないかということでした。入れ歯に性差があるのなら、保管箱も性差のことを考慮するべきではないか?考えてみれば当たり前のことを今まで僕は気がつきませんでした。そこで、僕は女性用の入れ歯保管箱を手配しました。
実は他にも入れ歯用保管箱にはいくつも色があるにはあったのですが、あまり色を多種そろえると在庫がでてきても困るところがあります。人気のある色はいいのでしょうが、人気の無い色の入れ歯用保管箱がいつまでも残る結果となりかねません。当分の間は男性用入れ歯用保管箱は水色、女性用入れ歯用保管箱はピンク色のもので対応することにしたのです。
これまでうちの歯科医院で販売している歯ブラシ類に関しては性差を考慮していたのですが、入れ歯用保管箱までが気が回りませんでした。反省しております。
| 2007年07月21日(土) |
大学入試合格者水増し工作 |
今朝、ニュースを見ているとこのようなニュースが報じられていました。
大阪の私立某高校が大学入試の際、優秀な生徒の受験料を負担し、志望校とは関係なく多数の有名私大を受けさせ、合格実績を「水増し」していたことがわかったというのです。これは、大学入試センター試験の結果だけで合否を判定する私大の入試を利用したもので、平成17年度入試を受けた生徒は、1人で「関関同立」と呼ばれる4私大の73学部・学科に合格していたとのこと。同校は、合格実績を上げた生徒に対し5万円の「激励金」も払っていたそうなのです。
正直な僕の感想としては、これは仕方のないことではないかと思います。 受験で実績のある有名高校は別として、少子化が進む中、多くの私立高校は生き残りをかけるために一人でも多くの生徒を募集する必要に迫られています。そのために、大学受験で実績があるかないかということは、生徒募集のための有効なアピール手段です。ところが、受験で実績の無い私立高校は、正攻法で受験実績を上げようとしても難しいところがあります。有名大学に入学できる学力のある生徒の数が限られているわけですから。 断っておきますが、これは何も有名大学に入学できる、できないで生徒たちの優劣をつけることではありません。けれども、実際の問題として、私立高校の立場として、将来の生き残りをかけるためには何としても大学受験実績を上げざるをえないのが現実であることは確かなのです。
そこでどうするか?今の大学受験制度によれば、私立大学の合否は、大学入試センター試験の結果だけで判定できる仕組みになっています。ということは、大学の二次試験を受けずして、合否がわかってしまうのです。この制度をうまく利用したのが、今回報道された大学入試合格者水増し工作なのです。 学力のある限られた生徒に複数の大学を受験させたことにし、延べ人数で合格者を増やすことにするわけです。表面的には有名私立大学に100名の合格者があったとしても、実際は数人の生徒が受験していただけだったことが可能になるわけです。
報道ではこのことが批判するような論調ですが、大学入試センター試験を受けるだけで大学の合否が判定できるのですから、決してこれは批判される問題ではないと思います。批判するのならば、大学入試センター試験の仕組みそのものを問題視するべきなのです。
この問題、実は今の大学入試センター試験制度が始まってから既に多くの私立高校で行われていました。 今から数年前、某私立高校に通っていた僕の従妹も志望校以外の大学を30数大学受けさせられ、合格通知を受け取っていました。受験料は某私立高校持ちであることは言うまでもありません。事前に複数の大学に受験することは担任の先生から言われていたそうですが、実際に蓋を開けてみると30数大学も受けていたとは思いもよらなかったそうです。 僕も実際に合格した30数大学の合格通知を見せてもらいました。本来、合格通知というと受験の努力により得られた貴重な物で、受験生にとって感慨深い、思い入れがあるものですが、従妹曰く
「何かたくさんの書類を一度にもらった感じしかしないね。不謹慎なのはわかっているけど、自分が実際に受験した感覚がない大学の合格通知をもらってもちっともうれしくないよ。」
大学入試合格者水増し工作。これは既に全国の多くの私立高校で公然と行われているのは間違いありません。少なくとも、今行われている大学入試センター試験の制度が継続する限り、行われ続けることでしょう。
| 2007年07月20日(金) |
大声で重宝される歯医者 |
僕はまったくわからないのですが、周囲にいる家族によれば、僕の声量はかなり大きいのだそうです。
「そんなに大きな声を出さなくても聴こえるよ」 と嫁さんやお袋に言われます。時にうるさく、煙たがれることもあるくらい。僕自身、自分が大きな声を出した意識は全くありません。聴力に問題があるというわけでもありませんが、どうも自分が出している声量の感覚と実際に聞こえている声量との間にかなりのずれがあるのは確かなようです。 そこまで気がついていながら、僕は自分の声量をコントロールする気は全くありません。それどころか、最近ではむしろ開き直っているくらいです。
「小さな声でボソボソと言っているよりはっきりと大きな声で言っている方がちゃんと伝わるでしょ。」
大声だと言われる僕ですが、世の中広いもので、僕よりもはるかに大声の持ち主がいるものです。僕の知人の歯医者であるE先生。学生時代、ラグビーの選手だったというE先生は非常にがっちりとした筋肉質の体型なのですが、体型のみならず、E先生の咽喉から発せられる声も声量が大きいのです。立派な体格をフルに生かした腹の底から湧き出るような迫力のある声は、一度聞けば誰もが驚くくらいの迫力です。
そんなE先生ですが、声が大きいことが評判を呼び、最近ではある集まりに頻繁に声を掛けられるようになったとか。その集まりとは決起集会。 昨今、参議院議員選挙が公示され、全国各地では参議院議員選挙まっさかりです。今回の参議院選挙のことを詳しく書くことは控えておきますが、参議院議員選挙が公示されるはるか前から、水面下では様々な団体が選挙活動を行い、中には決起集会のような集会が行われていました。
決起集会では通常、集会を閉めるにあたり、万歳三唱や頑張ろう三唱といったシュプレヒコールが行われるものですが、この際、壇上に先導して“万歳”とか“頑張ろう”と発声の音頭を取る人がいるもの。実は、この発声の音頭取りにE先生は、はまり役なのです。
僕自身、何度か発声の音頭を取るE先生の姿を見たことがあります。壇上で司会者から名前が呼ばれると、会場の席から立ち上がり壇上までダッシュ。そのダッシュたるや疾風の如くといったような勢いです。この勢いを維持しながら壇上に駆け上がるや否や候補者に一礼し、短い挨拶。
「今度の選挙、なんとしても○○先生を国会へ送るために、ここで皆さんと共に“頑張ろう”を三唱したいと思います。ご唱和願います。○○先生の勝利のために一丸となって、頑張ろう、頑張ろう〜〜、頑張ろう〜〜〜!」
1000人以上入る会場内に朗々と響き渡るE先生の声。その迫力に思わず圧倒されてしまいます。圧倒されるだけでなく、E先生のみなぎるパワーが参加者に拡散していくような錯覚さえ覚えます。ここで皆さんに生の声を聴かせられないのが残念でなりません。
今回の参議院選挙の前にもE先生は何人もの候補者の依頼で、壇上で発声の音頭を取ったのだとか。声の大きさで重宝される歯医者E先生。こんな歯医者も珍しいでしょうね。
| 2007年07月19日(木) |
大丈夫だと思った時に落とし穴がある |
昨夜は地元歯科医師会の会議。いつものように参加してきたのですが、会議途中、会議に間に合わず遅刻してきた先生がいました。
「すみません、遅れてしまって。」 遅刻してきたのはY先生。会議をしている部屋のドアを開けるや否や、Y先生は入室して来られたのですが、いつもと様子が違いました。その訳は、Y先生はびっこを引きながら歩いていたからです。
「Y先生、どうしたのですか、その足は?」 「いやいや、恥ずかしい話なのですが、先週末台風が来たでしょう。その際、雨漏りがするからといって屋根の上に上がっていたのですよ。はしごをかけて屋根の上を点検していたのです。屋根には問題がないことを確認してはしごを降りていたんですね。慎重に降りていたつもりだったのですが、あとわずかという所で足を踏み外してしまい転倒してしまったんですよ。その結果、左足の足首を捻挫してしまいましてね。このざまです。」
痛々しそうにびっこをひきながら歩いていたのはこのような理由があったからなのだそうです。その時、僕は思わずある話を思い出しました。その話とは、吉田兼好著の徒然草第百九段 高名の木のぼりの話です。
(原文) 高名の木のぼりといひしをのこ、人をおきてて、高き木にのぼせて梢を切らせしに、いとあやふく見えしほどはいふこともなくて、おるるときに、軒長(のきたけ)ばかりになりて、「あやまちすな。心しておりよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりて、飛びおるるともおりなむ。如何にかくいふぞ」と申し侍りしかば、「そのことに候。目くるめき、枝あやふき程は、おのれが恐れ侍れば申さず。あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る(つかまつる)ことに候」といふ。 あやしき下�瓠覆欧蹐Α砲覆譴匹癲∪賛佑里い泙靴瓩砲�なへり。鞠も、かたき所を蹴出してのち、やすく思へば、必ず落つと侍るやらむ
(現代語訳) 木のぼりの名人といわれた男が、人を指図して高い木にのぼらせて梢を切らせた折に、ずいぶん危なそうに見えるほど高いところに登っていた間は何も言わないで、降りる時に軒の高さくらいになったとき、「過ちをするな。気をつけて降りろ」と声をかけましたので、「これくらいの高さになったら、たとい飛び降りても降りられるだろう。どうしてこんなに言うのか」と申したところ、「そのことなのでございます。目がまわって、枝が折れそうで危ない間は、恐ろしくて自分で気をつけますから、こちらからは何も申しません。過ちは楽な気持ちになってから、必ず致すことでございます」と言う。 卑しい身分の人間だけれども、その言葉は聖人の戒めにも適っている。鞠でも、蹴りにくいところをようやく蹴り出して、これで安心と思うと、必ずやり損なうとやら申しております。
僕の独断では、吉田兼好の徒然草は、徒然に書き綴った文章でありながら、どことなく説教じみて好きにはなれないところがあるのですが、なぜかこの“高名の木のぼり”の話は印象に残っています。
人間というもの、仕事や作業をしている際、緊張している時は問題ないが、終わりに近くなり大丈夫だろうと気が緩んでしまう時に限って何らかのトラブルが生じやすい。仕事や作業をしている時は、終わるまで気を緩まないことが寛容である。
この話、僕の普段に診療でも当てはまる話です。様々な処置において山場を過ぎ、これで終わりだと気を抜いてしまうと、思わぬトラブルに遭遇してしまうことがあります。常に処置が完全に終わり、患者さんが診療所を出て行く時まで、歯科医は患者さんに対し責任を負わなければいけません。
これで大丈夫だと思った時にこそ落とし穴がある。
びっこを引くY先生の姿と徒然草の高名の木のぼりの話。自分への戒めとしなければいけないなあと改めて感じた、歯医者そうさんでした。
| 2007年07月18日(水) |
しばらく見ないうちに大きくなって・・・ |
「先生のお子さん、しばらく見ないうちに大きくなって・・・」
発言の主はNさん。Nさんは長年うちの歯科医院にかかっている患者さんの一人です。Nさんはうちの歯科医院の玄関に入った時、玄関先で遊んでいたチビたちの姿を見かけたそうで、以前のチビたちとの違いに驚いたようなのです。
「上の子どもが9歳で小学校3年生、下の子供が6歳で幼稚園の年長ですよ。」 「もうそんなに大きくなったのですな。ついこの前、上のお兄ちゃんが幼稚園に入園したという話を聴いた記憶があったんだけど・・・。時間の経つのは早いものですな。」 「そういうNさんのお孫さんもそうではないですか?最近、ご無沙汰ですけど、お孫さんがむし歯の治療にうちの診療所の通っていたのは幼稚園の時だったでしょう。歯の治療が怖かったみたいだけども、泣かずに一生懸命口を開けていた姿は何ともかわいいものがありましたよ。」 「あの子ももう小学校6年生ですわ。小さい頃は、乳歯に虫歯ができて先生に世話になったのですけど、そんな乳歯も全部永久歯に生えかわったみたいですよ。」
月並みなことですが、他人の子供の成長は早く感じます。新陳代謝の激しい子供たちは毎日少しずつ体が変化しているもの。その一方で、周囲の大人たちの記憶は過去の姿にとらわれてしまいがちで、現実の子供の成長についていけない側面があります。子供の実際の成長と子供に対する大人のイメージとのギャップ。思わず、
「しばらく見ないうちに大きくなって・・・」 という言葉が出てくるのも無理が無いところがあります。
この“しばらく見ないうちに大きくなって・・・”というフレーズ。 先日、僕は思わぬ場面で口にしてしまいました。
ある講演会に参加した時のこと。僕の席の隣にある男性が座りました。なかなか恰幅の良い男性だったのですが、以前にどこかで見たことがあるような顔をしていました。 “一体どこで会ったかな?” 僕はもしかして?と思い、隣の男性に声を掛けてみました。
「もしかして、Y君じゃない?」 「あれっ、そうさん先生じゃないですか?お久しぶりです。お元気そうで何よりですね。」
僕の隣に座っていた男性は大学時代の後輩のY君だったのです。学生時代、親しくしていた後輩のY君でしたが、実際に再会するのは10年ぶりでした。どちらかというと童顔だったY君ですが、顔だけでなくお腹周りもかなりの肉がついていました。そのため、僕は直ぐにY君だとはわからなかったのです。そこで思わず僕は言ってしまったのです。
「それにしても、しばらく見ないうちに大きくなって・・・」
Y君、思わず笑いながら 「食事量が増える一方で運動不足でしょ。あっという間に体重がふえますよ。メタボリックシンドローム一直線ですよ。しばらく見ないうちに大きくなるわけですよ、ハッハッハ・・・。」
このように冗談をうまく切り返してくれる人の場合はいいですが、時には冗談では済まされない場合もあります。
以前、僕は某デパートで買物をしていると、後ろから声を掛けてくる女性がいました。
“一体誰だろう?どこかで聴いたことがある声だけども” そんなことを思いながら振り返ったのですが、僕は声を掛けた女性が誰だか直ぐにわかりませんでした。
「私よ、S子よ。」
僕は思い出しました。僕が某歯科大学学生時代に実習のパートナーだったS子さんだったのです。学生時代は常に一緒に実習をしていたS子さんでしたが、大学を卒業後、彼女は直ぐに結婚し、二人の子供の母親になっていたのです。そのため、彼女とは会う機会がなかったのですが、偶然にも某デパートで十数年ぶりの再開となったのです。 なつかしいS子さん。思わず僕は言ってしまいました。
「S子ちゃん、しばらく見ないうちに大きくなって・・・。」 「・・・・・・・」
しばしの沈黙。二人の子供を持つ母親となったS子さんは学生時代の時に比べ、体格が一回りも二回りも大きくなっていました。それは事実だったのですが、S子さんは体重が増えていることを気にしているようだったのです。彼女の顔からは笑顔が消えておりました。 その後、彼女の機嫌を取り戻すの四苦八苦したのは言うまでもありません。
「しばらくみないうちに大きくなって・・・」
TPOと相手のことを考えながら言わないと、とんでもないことになることを思い知った、歯医者そうさんでした。
| 2007年07月17日(火) |
心臓ペースメーカーとiPod |
昨日、新潟県中越沖地震が発生し、多数の死傷者が出ているようです。家屋や道路の倒壊、鉄道への被害、原子力発電所の火災や放射性物質を含んだ冷却水が漏れるなど、社会インフラにも相当の被害が出ている模様。 僕自身、今から12年前に発生した阪神淡路大震災を経験しました。地震の揺れの恐怖、被害の甚大さについては身にしみております。被害に遭われた方には謹んでお見舞い申し上げます。そして、少しでも早く被害から立ち直られることを祈念してなりません。
さて、皆さんご存知のことと思いますが、心臓は体の隅々まで血液を循環させる臓器です。胸に手を当てると“ドク、ドク、ドク・・・”と音がしていますが。健康な人の場合、心臓は常に一定のリズムで血液を体中へ送っています。脈を触れると一定に時間で触れたり触れなかったりしますが、これがまさに心臓が収縮を繰り返している証拠です。
この心臓ですが、何らかの原因があり一定のリズムで血液を送れない場合があります。脈を触れてみると脈が一定のリズムで触れなかったり、脈が跳ぶような状態になります。このような一定リズムで心臓が収縮を繰り返さない状態を不整脈といいます。 僕は循環器の専門家ではありませんから詳しい話は書けませんが、薬の治療により不整脈の改善が見込めない人が少なからずいます。放置すると命に関わるリスクが生じます。そのような方の場合、人工的に心臓が脈を打てるような処置が必要となります。心臓が一定のリズムで脈を打てるように電気的刺激を与える装置のことを心臓ペースメーカーが必要となるのです。
現在、心臓ペースメーカーを装着した人は少なからずいらっしゃいます。専門家の話によれば、日本全国に心臓ペースメーカーを装着している人の数は数十万人いるそうで、毎年2万5千人近いペースで増え続けているのだとか。 これくらい心臓ペースメーカーの装着者がいるということは、歯科医院にも心臓ペースメーカーを装着した患者さんが来院される機会があるということです。僕が治療をしている患者さんにも心臓ペースメーカーを装着した患者さんがおられます。
心臓ペースペーカーを装着した患者さんの場合、歯科治療の際、最も注意しないといけないことは、電気を用いた治療装置を使用することができないことです。歯科治療において電気を用いた器具としてはどのようなものがあるかといいますと、電気メス、根管長測定器、電気歯髄診断器、イオン導入器、マイオモニターなどがありますが、これら装置は体に微量ながらも電気を通す、通電する装置ばかりです。これら装置¥を心臓ペースメーカーを装着している患者さんに用いると、心臓ペースメーカーが誤作動を起す可能性があります。心臓ペースメーカーを装着している人にとって心臓ペースメーカーが誤作動を起すということは非常事態です。最悪の場合、死に至ることも考えられます。歯科治療によって心臓ペースメーカーに誤作動を起すようなことは絶対に避けないといけません。
僕は神経の治療をする際、必ずといっていいほど、根管長測定器を使用します。これは、神経の治療を行う際には非常に重宝する測定機器であるわけですが、心臓ペースメーカーを装着している人の場合は使用を控えます。そのため、健康な方の場合の神経の治療よりも慎重に治療を行っていく必要があり手間隙がかかりますが、心臓ペースメーカー装着者の治療リスクを考えると、仕方のないことだと考えます。 また、心臓ペースメーカー装着者の治療の際には、僕は常に心電図とパルスオキシメーターといって、血液中の酸素濃度と脈拍を測定する装置を使用して患者さんの循環状態を監視しながら治療しています。
よく医療機関や電車などの交通機関の中で携帯電話の使用を控えるように言われていますが、その理由の一つが心臓ペースメーカー装着者の心臓ペースメーカーが誤作動を起す可能性があるからでした。最近の携帯電話では心臓ペースメーカーの誤作動に対する可能性が低くなってきているようですが、最近、ある医学雑誌を読んでいると携帯電話以外にも心臓ペースメーカーに誤作動を起す携帯装置があるという興味深い記事が掲載されていました。
その携帯装置とはiPod。かつて携帯して音楽を聴く装置の代名詞はウォークマンですが、ここ数年、ウォークマンになり代わり世界中に普及してきたのがiPodであることは誰もが否定しない事実でしょう。電車に乗っていると若者を中心にiPodで音楽を聴いている人を見かけるようになってきました。何を隠そう、僕もiPodを持っており、車の中で音楽を楽しんでいる輩の一人なのですが、このiPodが心臓ペースメーカーに対し支障を与える可能性があるという報告があったのです。 記事によると、心臓ペースメーカー100人の装着者に対し、iPodを心臓ペースメーカーを装着している部位から約5センチの位置に近づけ、影響を見たというのです。iPodを再生したままの状態とオンオフを繰り返す二通りを延べ800回行ったところ、2割〜3割の心臓ペースメーカー装着者の心臓ペースメーカーで障害が出たというのです。特に、第3世代と呼ばれるiPodで最も障害が多く、第4世代のiPodが続き、現行のモデルの初期型になる第5世代のiPodとiPod Nanoではほとんど障害が出ないとのこと。
研究者の話では、一般的な心臓ペースメーカーの装着者はiPodを利用していないが、しばしばiPodの愛用者である子供や孫、若者との接触があることから、今後更なる研究が必要であるとのこと。
心臓ペースメーカーもiPodも、立場こそ違え、科学技術の進歩の結果により得られた装置でありますが、おそらく、iPodの開発者は事前に心臓ペースメーカーに対する悪影響を想定していなかったことでしょう。科学技術の進歩は人々に様々な恩恵を与えてきている反面、思いもよらない結果を引き起こす可能性もあるものなのですね。科学技術の進歩を一方的に喜んでばかりもいられない、難しい時代になってきているものだと感じた、歯医者そうさんでした。
| 2007年07月16日(月) |
出来る範囲、出来ない範囲 |
かつて、うちの歯科医院にある高齢の患者さんが来院しました。下の奥歯から膿が出ているということで来院された患者さんだったのですが、実際に診てみると親知らずが横向きに傾いており、その周囲に口の中の細菌が感染し、化膿していたのです。専門的には、智歯周囲炎と呼ばれる症状でした。通常なら、僕は智歯周囲炎の原因となっている親知らずを抜歯するのですが、僕はそれをしませんでした。患部を消毒液で洗浄しながら、抗生物質を処方しました。そして、某病院の歯科口腔外科の専門医に紹介し、抜歯を依頼したのです。
どうしてそのようなことをしたのか? 健康な患者さんの親知らずであれば、僕は抜歯を行います。ところが、この患者さんは高齢でした。しかも、問診をしていると複数の降圧剤を服用し、肥満体型でした。このような患者さんをうちのような一般歯科医院で抜歯するということは危険であると僕は判断したのです。 抜歯とは言っても体には相当の精神的、肉体的ストレス、負担がかかります。健康な人でもそうなのです。これが高血圧で肥満である人の場合、健康な人と同じように抜歯をすれば、抜歯中に何か全身的な症状が出てくる可能性、リスクが生じます。抜歯により体調が変調し、場合によっては命の危険性を考えなくてはならない可能性があるのです。 何か体に全身症状があっても直ちに対処できる態勢がある医療機関で抜歯をする必要があるのです。僕が某総合病院の歯科口腔外科で親知らずの抜歯を依頼したのは、抜歯をすることにより何か体調の変調が生じても某総合病院であれば、他科の専門家が常駐し、病院内で連携して処置を行うことができるという安心感があったからです。
実際、この患者さんは紹介先の病院で診てもらったところ、外来での抜歯は難しく、入院をして全身麻酔をして抜歯をすることになりました。担当医からの手紙によれば、患者さんの抜歯によるリスクを考えると入院下で全身麻酔をかけながら抜歯することが最も安全に抜歯できるという判断をしたということが書かれてありました。
意外に思われる方がいるかもしれませんが、歯医者には自分の得意とする分野、そうではない分野というのがあるものです。歯医者でありながら歯や口に関する全ての処置をできないものか?と疑問に思われる方がいるかもしれません。 僕自身、自分の歯科医院に来院される患者さんには自分が出来る限りのことをしてあげたいという気持ちは強いのですが、気持ちとは裏腹に全ての口に関する治療の技量、経験がないのが正直なところです。
僕は今まで培ってきた歯科医としての知識、技術、経験をもとに患者さんの口の中を治療しているわけですが、歯科の分野というもの、仕事をすればするほどその奥深さに驚き、自分の能力の無さに気づかされてしまいます。
おそらく、どんな仕事でもそうだと思いますが、表面上簡単に見えている仕事であったとしても、追求していけばいくほど理想は高くなり、より自分を高めていきたいという気持ちが出てくるものではないでしょうか。欲深いと言われればそこまでかもしれませんが、飽くなき追求というのはどんな職種の専門家でも持ち合わせているものだと思うのです。この気持ちがあってこそ、プロとして精進し、世間に認められるのではないでしょうか。
将来的にはもっと自分を高めたいとは思っていても、現状は現状です。僕の場合、現在の自分の能力では自信を持って患者さんに治療を施すことができないことがあります。未熟な技量のまま、そして、充分な医療体制が取れないまま患者さんに治療を行えば、いくら良い治療法であったとしても患者さんに多大な迷惑をかけるだけです。患者さんにとってベストの治療法であったとしても、自分の手に負えないような場合、僕はその道の専門家を紹介し、治療を受けてもらうことをためらいません。
明確に自分が出来る治療、出来ない治療を分けることが僕は必要だと考えます。自分の技量が充分でないのに全てを抱え込んでしまうことは、結局のところ、患者さんのためにはなりません。自分の出来る範囲で治療できる場合は精一杯治療をする。出来ない範囲であれば、責任をもって信頼できる専門家に治療を依頼する。 僕の歯科治療におけるモットーの一つです。
| 2007年07月13日(金) |
日記才人 さようなら |
既にいくつもの日記で書かれていることであり、先日の僕の日記でも取り上げたことですが、今週一杯で日記才人が閉鎖されます。
思い起こせば今から5年前、“歯医者さんの一服”日記を日記才人に登録した時には、テキストの世界に入り口にようやくたどり着いた、これから自分の日記がテキスト界の大海原に船出するような期待と不安に入り混じった気持ちでした。 以後、ほぼ毎日、日記才人に更新報告をしてきました。今では日記才人への更新報告は毎朝の日課のようになっておりました。それが今週を最後にできなくなるとは・・・。
今日に至るまで日記才人に更新報告をし続けてきた僕としては、日記才人で多くの人に幅広く認められることを目標に、これまで日記を書いてきたようなところがありました。 そのおかげで何人もの読者の方に巡り合うことができ、何度かオフ会にも参加することができ、親しく付き合う友人もできました。その一方で、交流のあった日記書きさんが日記才人から一人、また一人と姿を消していったのも事実。特に、ここ2年間ではその傾向が顕著でした。かつて多くの仲間が集っていた日記才人も寂しくなったものだと感じていた矢先の日記才人閉鎖です。
この場を借りまして、改めて日記才人の歴代の管理人の方々に感謝の念を捧げたいと思います。中でも10年以上にわたる日記才人の歴史に幕を下ろす決断をされたdaisukeさんには心から御礼を述べたいと思います。ご苦労様でした。
日記才人が終焉を迎えるにあたり、僕は最後の更新報告をしました。 まるで、長年親しく付き合って来た彼女と別れるようなつらいものを感じます。
日記才人、長い間、どうも有り難う。
そして、さようなら。
| 2007年07月12日(木) |
歯痛は焼酎では治りません! |
僕も経験があるのですが、歯痛というのは一度起こると非常につらいもので、少しでも早く歯痛から解放されたいと願う気持ちはよくわかります。けれども、いくら何でも焼酎で歯痛を抑えようとするのは如何なものでしょうか?
昨日、このようなニュースが報じられていました。
7月11日、鹿児島県錦江町議会の副議長が道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで、鹿児島県警に摘発されていたことがわかったとのこと。この副議長は、7月1日午前10時ごろ、歯痛を治めるために焼酎でうがいをし、その後水で口をすすいでから軽トラックで近くの畑に向かっていたとのこと。その際シートベルトをしていなかったため、巡回中の警察官に止められた際、呼気からアルコールが検出されたというのです。
何とも呆れたニュースとしかいいようがありません。この本当に歯痛を治めるために焼酎でうがいをしたのか、別の目的でうがいをしたのかは定かではありませんが、歯医者として考えるに、歯痛を抑えるための焼酎によるうがいは全く意味がないように思います。
この副議長はどうして歯痛を抑えるために焼酎でうがいをしたのでしょう?一種の消毒薬の代わりにうがいをしたのでしょうか? 焼酎は酒の一種です。酒というのはエチルアルコールであるはずです。このエチルアルコールは消毒用アルコールそのものなのですが、通常、消毒用に使用されるエチルアルコールの濃度は60%〜95%の範囲です。かなりの高濃度のエチルアルコール濃度です。調べてみるとポーランドのスピリタスという酒が96%、ラム酒の一部が75%のものがあるようですが、酒の中で消毒用アルコール程度の高濃度の酒はほとんど見当たらないのが現状です。 焼酎の場合、アルコール濃度は25%程度と言われています。ということは、焼酎を口に含んだとしてもその消毒効果は、アルコール濃度が少なすぎるために期待できないといえるでしょう。すなわち、焼酎による消毒は意味がないと言えるのです。
また、いくら少量の酒であったとしても、一度口の中に含んだ酒は口の中の粘膜から吸収されるもの。 狭心症の発作を起しやすい人は常にニトログリセリン成分を含んだ舌下錠を携帯し、狭心症の発作が起これば直ちに口の中に含むようにしているものですが、これは如何に口の中の粘膜から薬物が吸収されるかを物語っている証拠の一つです。酒の場合も同様で、ごくわずかな量であったとしても、一度口の中に含んでしまえば血中にアルコールが入ってしまうのです。そうなるとどうなるか?血中に吸収されたアルコールは交感神経を刺激し、血圧を上昇させ、血の流れが速くなるもの。歯痛の際、歯の神経(専門的には歯髄といいます)は炎症が起こり、痛みが生じているのですが、血の流れが速くなると歯の神経の炎症をさらに刺激する結果となります。すなわち、アルコールを口の中に含めば、結果的に歯痛が更に悪化することになりかねないのです。
ちなみに、僕は何らかの酒、アルコールを呑んで来院した患者さんの治療は行わないことにしています。治療に際し、血中にアルコールがある状態というのはそれだけでリスクがある状態です。歯科医院に来院した患者さんは正当な理由がない限り、どんな患者さんでも診療拒否することはできませんが、酒、アルコールを呑んで来院した患者さんの場合、診療を断ることは僕は正当な理由に当たると考えています。それくらい、酒、アルコールが体に与える影響は大きいものなのです。
鹿児島県錦江町議会の副議長は愚かなことをしたものです。結局のところ、歯痛はきちんと治療されたのでしょうか?詳細はわかりませんが、今後歯痛が起こるようなことがあれば、焼酎でうがいをせず、近くの歯科医院へ直行して欲しいものです。
先週の日曜日、僕はある講演会を聴講しに出かけたことは既に書きましたが、その講演会へ行く途中のことでした。電車に乗って座り、何気なく前を見ているとどこかで見たことのある顔の持ち主が僕の対面に座っているのが見えました。
“一体誰だっただろう?“ と思い、頭を巡らせていると思い出しました。小学生時代の同級生H君だったのです。当然のことながら、僕はH君に声を掛けると
「こんな電車の中で会うなんて奇遇だなあ」 と言いながら、しばらくの間話をしておりました。小学生時代に仲の良かったH君でしたが、中学校以降はお互いに別の中学校、高校、大学と進学し、ほとんど付き合いはありませんでした。直接H君と出会い、じっくりと話をするのは30年ぶりぐらいでしょうか。それでもどこか小学生時代の面影はあるもので、僕はH君の姿を見間違えることはなかったのです。
「そうさんはあまり変わっていないなあ。」 「おいおい、小学生の時からもう30年近く経っているんだよ。その時と同じというのであるのは、何にも成長してみたいじゃないか。」 そんなことを言いながら、僕はH君には“あまり変わっていないなあ”とは言えませんでした。その訳はH君の頭の髪の毛がすっかり薄くなってしまっていたからです。小学生時代のH君は髪の毛はそれなりに多かったはずですが、30年近く経った今では、頭頂部は地肌が見えてしまっていました。髪の毛の生えぐあいは個人差がありますが、それにしても同い年でありながら、頭頂部の頭の髪の毛の少なさを見ていると、
“結構ストレスや苦労が多いのだろうか?“ と心配してしまいます。
そんな彼の容貌で一つだけ変わっていないことがありました。 それは、後頭部のいわゆる絶壁。小学生時代、髪の毛が短かったH君ですが、髪の毛が短いということは頭の骨格も目立つもの。彼の後頭部の絶壁も相当目立っていました。そのせいでしょうか、クラス仲間から“絶壁”というあだ名をつけられていたH君でしたが、H君は気にするどころか、自らの絶壁を自慢し、自信を持っていました。 正直言って、人様の体のことを馬鹿にすることは褒められたことではありません。決してそのようなことをすべきではないのですが、H君自身は自分の後頭部の絶壁を悔いるどころか、それを自分の個性としてプラス思考に考えていたのです。
そのH君ですが、30年経過した今でも彼の絶壁は健在でした。当時よりも髪の毛の長さは長くなっていたH君ですが、髪の毛の本数は激減。そのため、彼の後頭部の絶壁は健在でした。 僕は、“絶壁頭の人は一生絶壁頭のままなのだろうか?”という素朴な疑問を持っていたのですが、少なくともH君を見ていると絶壁頭は一生涯絶壁である続ける可能性が高いように思いました。
絶壁頭とは言っても、H君の頭の良さ、明るいキャラクターは健在です。むしろ、30年を経過してもむしろパワーアップした感さえあります。H君を見ていると、頭の形と脳の機能とはあまり関係がないようです。
そんな僕の気持ちを察してか、H君は言いました。 「頭の髪の毛が薄くなってから後頭部の絶壁が余計に目立つようになったよう。これで頭を緑色に塗れば四角スイカだな、ハッハッハ・・・。」
H君のキャラクター、是非見習いたいものです。
| 2007年07月10日(火) |
医者や歯医者での冗談は止めて! |
「本当に困ってしまいますよ。いい加減にして欲しいです。」
発言の主はうちの歯科医院の受付さんです。一体何事か?と思い尋ねてみると、どうもある患者さんから電話での予約のやり取りに原因があったようです。
「ある無断キャンセルされた患者さんが電話をかけてきたのですよ。予約をもう一度取りたいと。私の方がいつが都合が良いか尋ねたところ、『来年の8月頃にお願いします』と言われたのです。正直言って、私『来年の8月頃にお願いします』の意味がわかりせんでした。普通の予約の場合、1年以上後の予約を取ることはめったにありませんから。“本気でそのようなことを言っているのか?”、“何か仕事の都合で1年以上来院できないのか?”そのようなことを思っていながら少し沈黙があったのです。そうしたら、『すみません、ほんの冗談です』ですって。こちらは真剣に予約のことを考えていたのに冗談だというのは、何だか馬鹿にされたようで気分が良いものではないですよ!」
僕自身、普段から下らない冗談を言うのが決して嫌いではない方ですが、今回の患者さんの冗談というのは適切ではない冗談だと感じました。
歯科医院だけに限りませんが、他の診療所や病院といった医療機関は、非常にデリケートな場所だと言えます。病気を抱え、悩んでいる患者さんが多く来院し、治療を受けている場所だからです。 “何とか痛みを止めて欲しい” “自分が苦しんでいる症状の原因が何か知りたい” “今の健康状態を知るために検診を受けたい” などなど、患者さんは皆一様に自分の体のことを真剣に悩み、考え医療機関を受診しているのです。 そのため、医療機関での電話のやり取りもそれなりに気を遣うものです。何か誤解があれば、その誤解により相互不信が生まれたり医療過誤が生じたりします。どんな些細な言葉のやり取りでも真剣にやり取りをしないといけない場が医療現場と言えるでしょう。 そのような場において、僕は冗談というのは如何なものかと思うのです。緊張の走る現場に少しでも気分転換を図る意味で冗談というのは必要なのかもしれませんが、患者さんの体を取り扱っているという現場の性格上、冗談やギャグを発するということは医者、歯医者をはじめとした医療スタッフも患者さんも遠慮する必要があると思うのです。
そこまで堅苦しく考えなくてもと思われる方もいるかもしれませんが、たとえ予約の電話であったとしても医療現場では真剣なやり取りの一つです。そこにいきなり親しくも無い人同士が冗談を言うと、大切な意思疎通がはかりにくくなります。場合によって相手を精神的に傷つけるようなことにもなりかねないのです。ただでさえ体のことでぴりぴりしている現場で不適切な発言が行われると、ちゃんとした医療行為に差し支えるもの。一事が万事で、何かの誤解を招くようなことが一つでもあると、そのことがきっかけでトンでもない医療事故が起こりかねません。
昨今、患者さんに対する医者、歯医者をはじめとした医療スタッフの言葉のやり取りが問題があるようなことが報じられることがありますが、患者さんの側も医療現場では、冗談とも本気ともわからないような言葉のやり取りは控えて欲しいと思います。
| 2007年07月09日(月) |
餅より咽喉詰めしやすい食べ物とは? |
昨日は日曜日ですが、僕は朝早くからある歯科関係の某学会を聴講しに行ってきました。僕は日頃患者さんの口の中を治療している歯医者ですが、学会や講演会では、普段の治療経験や歯科関係の論文、雑誌だけでは得ることのできない最新の治療法や知見などを知ることができます。せっかくの休みではありますが、定期的に学会や講演会に参加し、聴講することは歯医者として必要なことではないかと思っています。
さて、今回の某学会の感想ですが、全体的に興味深い内容でしたが、中でも僕が非常に興味深く感じたことは、ある事故に関する講演会でした。その事故とは食べ物の咽喉詰め事故に関すること。 これまで咽喉詰め事故に関する報告は歯科医院単位、病院単位で行われることが多かったのですが、昨日の講演では、近隣の数市の消防局に救急車の要請があった咽喉詰め事故について、3年間に消防局に残っていたデータを調べたものであり、以前の報告と比べかなり広範囲の事故の様子がわかる内容のものでした。 咽喉詰め事故に関しては、食事の時間帯に頻発しているとのこと。これは考えてみれば当たり前のことのように思いますが、実際のデータとしてまとめられたグラフを見ると、その傾向は一目瞭然。特に、夕食付近の時間帯に咽喉詰め事故が多いのが目に引きました。
咽喉詰めに関しては60歳以上の高齢者が多く、しかも統計学的に男性よりも女性に頻発していることが報告されていました。どうして女性の多いのか、理由は不明なのだそうですが、多分に女性の方が寿命が長いことが影響しているのではないかという演者の考察がありました。
僕が最も関心をもったのが、どんな食べ物で咽喉詰めを起こしやすいかということです。誰もが餅ということを想像するかもしれません。僕もそのように考えていました。ところが、実際の報告例ではそうではなかったのです。 咽喉詰め事故を起こしやすい食べ物では、餅は第二位でした。最も咽喉詰め事故を起こしやすい食べ物とは、それはパンだったのです。 どんなパンかということに関心がいくかと思いますが、これが実に意外でした。それは、水やジュースなどに浸して柔らかくしたパンで咽喉詰めをするケースが多いというのです。よく高齢者の人で自分の歯が少なかったり、入れ歯を装着している人の場合、パンを食べる際、硬くて噛みにくいということで、パンを水などに浸して食べる方がいると思います。僕の周囲でもかつて入れ歯になった祖父や祖母がよくパンを水に浸して食べていたものですが、この行為が最も咽喉詰めを起こしやすいのだとか。 どうしてこのようなことになるのか、詳しい解明はまだのようですが、会場に講演を聞き入っていた参加者からは驚きの声が上がっていました。 また、第三位に挙がっていたのはご飯。ご飯に関しては、汁気を含んだものやそうでは無いものに違いはなかったのだとか。 意外と報告で少なかったのはゼリー。昨今こんにゃくゼリーによる咽喉詰め事故が多いという報道が多く、僕の日記でも取り上げましたが、これに関しては3年間で2〜3例程度ということのようでした。
それにしても、咽喉詰め事故の原因で最も多いのがパン、しかも、水に浸したパンであるというのは歯医者として注意しなくてはいけないことです。柔らかくしているから安全に食べ、飲み込むことができるとばかり思いがちですが、高齢者の場合、そうではない。むしろ、嚥下反射の衰えは想像以上であることを思い知らされた次第です。今後の高齢の患者さんに対する食事指導に役立てるようにしていきたいと思います。
| 2007年07月07日(土) |
病院内七夕コンサート |
七月も早いもので今日でもう七日が経過しました。よく考えてみれば、七月七日は七夕です。天の川を挟んで織姫と彦星が一年に一度出会うことが出来る日なのだそうですが、梅雨のシーズン真っ盛りの今日この頃、天の川を見ることはできるでしょうか?
さて、七夕ということで思い出したことがあります。今から10年前のことです。僕はある地方のY病院の歯科へ赴任し、勤務しておりました。赴任したばかりの頃、僕は医局の机の近くにいるある先生から突然声を掛けられました。
「先生、七夕コンサートに参加してみない?」
一体何のことなのか全くわかりませんでした。声を掛けてきたK先生曰く
「うちの病院では毎年七夕に近い、外来診療の無い土曜日に院内に入院している人を病院の大会議室に招いてコンサートをするんですよ。毎年、いくつかのグループがいろんな楽器や歌で院内に長期入院している人を励ます意味で演奏をするのです。私自身、学生時代に合唱をしていまして、毎年七夕コンサートでは病院内の先生やスタッフを集めて、何曲か合唱しているんですけど、先生も興味があれば参加してほしいと思って声を掛けたわけです。」
神経内科医であったK先生は、長期入院をしている患者さんも数多く受け持っていたのですが、長期入院している患者さんが精神的に不安定になりやすいことに悩んでいたのだとか。何とか精神的に安定してもらうような手立てはないものか?他の院内の先生にも話をしたところ、自分と同じように病院に長期入院している患者さんについてK先生と同じような悩みを持っている先生が多数いることがわかったそうで、そんな仲間と一緒に何か長期入院している患者さんを励ますことができないかどうか、考えていたそうです。 そこで思いついたアイデアが音楽で長期入院患者さんの心を少しでも和ませてあげたいということでした。K先生は大学生時代、合唱に熱中していた時期があったそうですが、院内の医者の中にK先生と同じように合唱が好きだった先生が複数おり、自分を含めた音楽好き医者が音頭を取ってはじめたのが院内七夕コンサートだったそうです。
七夕コンサートを始めた頃はこじんまりとしていた催し物だったそうですが、回数を重ねるとともに病院内での評判、評価が高まり、音楽に関心が薄かった病院長も七夕コンサートに注目するようになったのだとか。 K先生は病院長にもいろいろと七夕コンサートに関する協力を求め、病院長もいろいろと力を貸してくれるようになったのだそうです。
その中でも特筆すべきことは、購入したピアノだったとのこと。 当初、K先生はコンサート用のピアノが必要だと思い、中古のピアノでも購入できないかと考えていたそうです。そこで、病院長に直談判しようとしたのですが、同じ同士の一人が冗談で
「同じピアノを購入するならスタインウェイのグランドピアノを購入できないか当たってみましょうよ。だめもとですから。」
スタインウェイのグランドピアノ。世界中で活躍するプロのピアニストの中でも最も人気のあるピアノがスタインウェイですが、品質の高さだけでなく値段も中途半端な高さではありません。そんなピアノを購入するように病院長に交渉するなんて無謀。スタインウェイのピアノを知っている者であれば誰もがそう思うはずですが、結果は
「レントゲンCT装置よりも安いね。」
病院長の鶴の一声で何とスタインウェイのグランドピアノを購入したというのです。当時、多くの病院が赤字で苦しんでいる中、Y病院は数少ない黒字経営病院だったのです。黒字経営にしたのは病院長の経営手腕のせいだったわけですが、病院長の思い切った決断により、というよりも病院長のスタインウェイに対する無知が故の決断だったかもしれませんが、Y病院にはスタインウェイのピアノが置かれたのです。
僕が参加した七夕コンサートでもスタインウェイのピアノが使われたのはいうまでもありません。僕が参加した七夕コンサートも当然のことながらスタインウェイのピアノの伴奏や演奏に使われていたのは言うまでもありません。
実際に参加してみて気がついたのは、観客として演奏を聞いている患者さんの顔が生き生きとしていたことです。患者さんの中には自分で歩くことができず車椅子で会場に来ていた患者さんや人工呼吸器を装着したままの患者さん、中にはベッドに寝たまま会場に演奏を聴きに来ていた患者さんがいたのですが、誰もが演奏に熱心に聞き入り、中には小声ながらも自分で歌いだす患者さんもいたくらいでした。演奏の出来は決して上手いとはいえないものでしたが、心をこめて奏でた音楽の演奏は確実に入院患者さんに伝わったように思えました。会場全体を包んでいる空気が実に温かかった。こんな状態を僕は経験してこなかっただけに、非常に新鮮な驚き、感動として僕として僕としても貴重な体験をさせてもらったと思っています。
Y病院を辞した今でも当時声を掛けて頂いたK先生とは時々やり取りをしているのですが、今年は七夕である今日が七夕コンサートだとのこと。まさしく七夕の七夕コンサートです。遠い土地からではありますが、今年の七夕コンサートの成功を祈っております。
| 2007年07月06日(金) |
歯の一本くらい無くなってもいいじゃないか |
先日、僕はうちの近所の病院に勤務している弟と話をしていたのですが、話の中で、弟は自分の部下が起した、患者さんへのトラブルに関して話をしてくれました。そのトラブルとは、気管内挿管時におきた歯のトラブルだったのです。
病院において患者が命の危険にさらされている時、真っ先に行わないといけないことは呼吸がちゃんとできるようにすることです。呼吸ができず窒息してしまうと、体の全ての生理機能が維持することができなくなり、命を落とすことになります。そのため、命の危険があり呼吸を維持することが難しいと判断する場合、医者は口から気管へプラスチック製のチューブを挿入し、呼吸の通り道を確保し、呼吸が管理できるようにすることが求められます。このことを気管内挿管といいます。これは何も命の危険、呼吸の維持が困難な場合だけに行われるものではありません。全身麻酔の手術を行う際にも行われることです。
口から挿管用チューブを入れて気管へ挿入する際、行われる作業の一つに喉頭展開と呼ばれる作業があります。喉頭鏡と呼ばれる器具を用いて、挿管用チューブを気管に入れやすいようにするため作業です。なぜこうした作業をしなければならないかといいますと、気管の入り口は食道の入り口と近接してからなのです。気管に挿管用チューブを入れているつもりが実際は食道に入っていたことが起こりうるからなのです。せっかく呼吸ができるようにしている挿管した挿管用チューブが食道に入っているようでは意味がありません。そのため、喉頭鏡を用いて挿管用チューブが誤って食道に入らないよう、確実に気管に入るようにするようにしないといけないのです。
ところが、喉頭鏡を喉頭展開の作業時にしばしば思わぬトラブルが生じることがあるのです。その一つが口の中のトラブルです。喉頭鏡は金属製の硬い材質でできています。喉頭鏡を口の中からのどの奥へ入れるわけですが、その際、口の中の歯に強く接触したり、当たったりすることがあります。気管に挿管用チューブを挿入する作業は時間との勝負です。少しでも早く気管へ挿入するためにどうしても喉頭鏡を使う作業も手荒くなりがち。 しかも、医者は口の中の歯のことは意外と知らないもの。歯や口の中の状況を詳しく知らずして喉頭鏡や挿管用チューブを使う場合があるのです。命の危険にさらされている瞬間においては口の中まで気が回らないのは無理もないことかもしれません。
その結果、喉頭鏡や挿管用チューブを使用する際、ついつい歯を折ったり、歯が脱臼し、抜け落ちてしまうことがあるのです。特に、患者さんが歯が歯周病が進行していて歯がぐらぐらしている状態であったり、むし歯が多く放置していたような場合、挿管作業中に歯を傷つけてしまうことがあるのです。弟の部下が起したのもまさにこのことだったのです。
弟が言うには、今回文句を言っている患者さんは、救急で運ばれてきた患者さんで、自分の部下が気管内挿管をしたそうですが、命が助かり元気に快復するや否や自分の口元を見て、 “歯が折れているじゃないか!”と文句を言っているのだとか。部下は自分のミスを認め謝っているのだそうですが、 “親からもらった歯に傷がついた”と納得しないとのこと。
確かに、自分の歯が医療行為によって傷ついたことに関しては医者に責任があることでしょう。しかしながら、歯医者である僕がこのようなことを書くのは問題かもしれませんが、人間というもの命があってなんぼのもの。命の危険にさらせている時、命を救うために行われる処置に文句をつけるとは何事だと思います。結果的に命が助かったのであれば、歯の一本が無くなったり、傷がついたりしても仕方がないことではないかと言いたいのです。歯が傷つけば、歯を修復すれば良いことです。歯が無くなればブリッジや入れ歯、場合によってはインプラントという処置もできます。これら処置が出来るのは、命があってこそ。命がなければ歯の処置を考える以前の問題です。
気管内挿管時に歯にトラブルが出るような患者さんの場合、多くは日頃の歯の手入れが行き届いていないことが多いもの。そんな自分の不始末を棚に上げておき、しかも命が助かっておきながら、自分の歯のことをとやかく文句を言うというのは、僕は如何なものかと思うのです。自分の命と引き換えに歯の一本失ったとしても、それで生きながらえたというのであれば、そのことに感謝をすべきではないか?文句を言う筋合いはないと思うのですが。
すみません、いつもより少々過激にな日記になってしまいました。
| 2007年07月05日(木) |
保険証の使いまわしは詐欺行為 |
日本では国民皆保険制度となって56年が過ぎています。 国民皆保険制度とは、日本国内に住所を有する全国民(および日本に1年以上在留資格のある外国人)が何らかの形で健康保険に加入する制度のことです。国民であるならば、誰もが何らかの健康保険組合に加入するか、もしくは生活保護による公的医療扶助を受けているはずです。 ところが、昨今の経済状況の悪化によるこの国民皆保険制度が崩れつつあります。生活の困窮から保険料を納付することができず保険証が発行されない人、そして、外国籍の人で不法就労している人などは保険証を持っていないケースが多いのです。
このような保険証を持っていない人が医療機関を受診する場合、かかる医療費は全額自己負担となりますが、保険証を持っていない人のほとんどは治療に要した治療費を支払う経済的余裕もないのが実情です。そのため、医療費の未払い問題が頻発しているのが実情で、今まで僕の日記でもそうした現状を何度と無く書いてきたのですが、先日、このような話を地元歯科医師会の先生と話をしていると、あることを注意されました。それは、保険証に書かれている名前と本人が一致しているかどうかをきちんと確認するようにということでした。
地元歯科医師会の先生の話によれば、最近、ある歯科医院で警察から問い合わせがあったとのこと。どういう問い合わせかというと、ある外国出身者で不法就労している人が警察に身柄を拘束されたそうなのですが、取調べでどうも複数の医療機関に通院していたことがわかったというのです。不法就労者であるが故、正式に発行された保険証は持っていない。それにもかかわらず複数の医療機関で堂々と保険診療を受けていたとのこと。警察での取調べにより、どうも仲間内で他人の保険証を使いまわしていたことがはっきりしてきたというのです。保険証で書かれていた人物を複数の人間が扮し、いくつもの医療機関で保険診療を受けていたようなのです。その医療機関の一つにある歯科医院があがったようで、どういった経緯で治療を受けていたから、捜査官が歯科医院に来院し、詳しい事情とカルテを照合していたとのこと。
一見すれば、保険証の使いまわしは弱者救済行為のように思えますが、実際はそうではありません。 保険組合は所属する多くの人たちの保険料によって成り立つもので、保険組合員同士の相互扶助、助け合い的な意味合いがあるものです。それを全く保険組合とは関係の無い他人がその保険組合の保険証を使うということは、保険組合員の掛け金を騙し取る行為、すなわち詐欺行為そのもので、決して許される行為でありません。 これまで多くの患者が来院する医療機関の窓口では、保険証を持ってきた人を本人確認するような厳密な確認作業はことはこれまで行われてきませんでした。お互いの暗黙の信用というものがあったはずなのですが、昨今の経済的困窮状況や海外からの不法就労者の間ではそうした信用を逆手に取り、何も言わなければわからないだろうということで堂々と保険証を使いまわしているようです。 こうした行為は以前から何度か聞いたことがありました。夜の世界で生きている人たちや堅気で無い人たちの中にこうした保険証を使いまわしして、治療を受けていたのがばれ、警察に拘束されたという話は聞いたことがあるのですが、最近は外国出身者の間でこうした保険証の使いまわしが頻繁に起きるようになったというのはご時勢なのでしょうか。何とも嘆かわしい事態だと言えるでしょう。
医療機関でも金融機関と同様に保険証と厳密な本人確認を行わないとできないような時代になりつつあるようです。何とも世知辛い世の中になってきたものだと思いますね。
僕は不定期に“有名人口元チェック”と称して、世間で注目を浴びている人の口元を見てどんな歯をしているかどうかを取り上げています。有名人の口元はテレビ番組やニュースで流される映像や雑誌などで掲載される写真などを見て判定するわけですが、この作業、結構慎重にやっているつもりです。その理由の一つは、ネタ元になっている画像に修正がかけられている場合があるからです。
以前、僕は格闘家のボブ・サップの口元を紹介したのですが、後日、ボブ・サップが出演している某電化製品メーカーのコマーシャル映像を見て、僕はびっくりしました。 このコマーシャル映像では、ボブ・サップが大きな口を開けながら笑うというシーンがありました。その際、カメラワークが下から撮影した映像だったせいか、上の奥歯の方がはっきり見えたのですが、僕は思わず目を疑いました。本来、ボブ・サップの上の奥歯には、インレーと呼ばれる銀色の金属の詰め物が詰めてあるはずが、コマーシャルでは、その歯が真っ白になっていたからです。コマーシャル映像では、歯のインレーを白く修整したことを確信しました。
この手の画像の修正というのは、しょっちゅう行われているようです。ある雑誌関係の知人の話によれば、最近の写真や映像はデジタル化されているため、以前よりも簡単に写真の修整できるとのこと。顔の些細な傷やしわ、そばかすやほくろ、クマ、髪の毛の色なども自然な形で隠すことが可能なのだそうです。多くのファッション雑誌で写っているモデルの写真には必ずといっていいほど修整がかけられているとのこと。 こうなると、何が本来の姿か写真で判定するのかは難しいくらいになっています。
この手の修整写真、何もファッション雑誌に限ったことではないようです。先日、親父があるパンフレットを持って帰ってきたのですが、そのパンフレットを見て僕は、驚いたというべきか呆れたものです。それは、受験写真に関するものでした。
表紙に “お受験専用写真”と書いてあるパンフレットには、次のような殺し文句が。
写真は合格への第一歩です。
更に続きます。
添付する写真は、お子様を証明する物ですから写真での第一印象もやはり重要なポイントと言えるでしょう。
写真では、お子様の表情をいかに上手く出せるかが大きな要因です。
このように謳っているパンフレットには写真の修整例が掲載されていました。例えば、口元からわずかに見えた歯を消したり、目の下のクマや頬の傷を消去したり、髪の毛の色を黒くするといった例が掲載されていました。 まさしく、ファッション雑誌で行われていると言われているような写真の修整例です。
中学生以上の場合であれば、本人の学力を試験で調べ、一定以上の成績を取った者が入学を許可されるはずです。ところが、小学校や幼稚園のお受験の場合、ペーパーテストだけで合否の判定をするということはできません。合否の判定は本人の資質もあるでしょうが、それ以上に保護者で決まるといいます。 それ故にお受験をする子供を持つ保護者はかなり力が入るものですが、果たして子供の受験写真にまで手を加えないといけないものだろうかと思います。 小学校や幼稚園のお受験尾場合、面接がありますから、少なくとも写真だけで合否を判定するようなことはしないはず。そのことをわかっていれば、何も受験用写真を修整しなくてもいいのではないかと思うのですが、この手の写真の需要があるということは、少しでも他の受験生と差をつけたい、差別化したいという親の気持ちがあるということでしょう。受験生を持つ親の心理をたくみについた商売だと言えるでしょう。えらい時代になってきたものです。
ちなみに、僕が是非とも修整した写真を採用して欲しいと強く願うものがあります。それは、自動車免許証用写真。 自動車免許証更新の際、いつも僕が憂鬱なのは、自動車免許証に掲載される写真にろくな出来のものがないからです。 自動車免許証というのは単に自動車を運転する際、携帯するだけのものではありません。いろんな手続きを行う際、身分証明の代わりに用いられることが多いものです。自動車免許証のコピーを取られることが多いだけに、少しでもましに写っている写真の自動車免許証を持ちたいものですが、いつも警察の自動車免許更新センターで撮影される写真は、
“これが俺か!” と言いたくなるようなひどい写真ばかり。何か犯罪を犯したかのような自分の惨めな写真と5年間も付き合わないかと思うと、自動車免許証の写真こそ修整をかけて欲しいと思わざるをえないのです。
このように感じるのは僕だけではないと思いますが、皆さん、如何でしょう?
| 2007年07月03日(火) |
どうしてアメリカ大リーグ選手はガムを噛むのか? |
かつて野球愛好家にとって夢の世界であったアメリカ大リーグでしたが、今や13人もの日本人大リーガーが活躍し、連日、マスコミでその活躍が報じられています。昨日も、アメリカ大リーグオールスター戦の選手発表がありましたが、シアトルマリナーズのイチロー選手とロスアンゼルスドジャースの斎藤隆投手の二人が選ばれました。日本人にとってより身近になったアメリカ大リーグだと言えるでしょう。
そんなアメリカ大リーグの試合を見ていて気がつくことは、ほとんどの選手がガムを噛みながらプレーをしていることです。日本のプロ野球ではほとんど見かけない光景ですが、アメリカ大リーグでは以前からガムを噛みながらプレーしているようです。どうして、大リーガーたちはガムを噛みながらプレーしているのだろう? こういった疑問を持っている人は一人や二人ではないでしょう。
現在、ガムを噛むことによる運動能力向上に関する研究は、多くの多くの研究者たちによって報告されています。今わかっていることは
・ガムに含まれる香りや味覚による心理学的効果 ・ガムを噛むことによる脳内血流の増加 ・ガムを噛むことによる脳のヘモグロビン量の増加 ・ガムを噛むことによる交感神経、副交感神経の機能アップ ・ガムを噛むことによる下肢筋力の増強 ・ガムを噛むことによる咀嚼能力の亢進 などがわかっています。
先日、ある歯科関係の学会誌を見ていると、興味深い記事が掲載されていました。それは、ダーツに関する記事で、ガムを噛みながらダーツをする人とガムを噛まないでダーツをする人たちの結果を比較すると、結果および咬合力、握力、背筋力がガムを噛む方が噛まない方よりも統計学的に有意に差が出たのだとか。すなわち、ガムを噛みながらダーツをする方が身体能力が向上し、結果的に成績もよかったという結果が出ているそうです。 ダーツのように競技中、集中力が要求され、誰にでも簡単に行えるポピュラーな競技でこのような結果が得られたことは、他の多くのスポーツにおいても同様のことが言えるのではないかということが指摘されたというのです。
ただし、このことでガムを噛むことが運動能力につながるのだと結論付けることは時期尚早のようです。まだ基礎的な実験結果と実際の臨床データとの関連が不透明で、これからの研究課題であるのだとか。ガムを噛むことによるスポーツ運動能力の効果は、まだ科学的に研究途上であり、完全には証明されていないのが実情のようです。
ただし、ガムを噛むことによる運動能力向上は、多くのスポーツ選手が気がついているようで、その代表例の一つがアメリカ大リーグでプレーする大リーガーだと言えるでしょう。彼らは経験的に自分たちの運動能力がガムを噛むことにより向上することを知っており、そのため、試合中はガムを噛みながらプレーしているように思えます。
日本人から見れば、ガムを噛みながらプレーをする大リーガーというのは品が無いように思いがちですが、スポーツ歯学の分野の研究では、少しずつガムを噛むことによる運動能力の向上が証明されつつあるようです。噛むという行為は食事に無くてはならない行為ではありますが、単に食事だけでなく、運動能力に与える影響もかなりのものがあることが言えそうですね。
外部から閉鎖された空間に何か異臭を感じた時、不安に感じる人が多いのではないでしょうか?今から12年前の地下鉄サリン事件では、何か異臭を感じる否や多くの人が次々と倒れ、尊い命が多数奪われたことは記憶に新しいところです。普段感じないような特殊な異臭というのは何がしかの異常事態があると考えていいのではないでしょうか? 昨日もこのようなニュースが流れていました。
1日午前8時ごろ、JR神戸線の播州赤穂発近江今津行き新快速が西明石駅(兵庫県明石市)を発車後、乗客から「車内に汚物が散乱している」と運転士に連絡があったとのこと。次の停車駅の明石駅で駅員らが確認すると、2両目から6両目にわたって大便とみられる汚物が落ちていた。駅員らが同駅で除去して運転を再開したが、車内の異臭が消えず、神戸駅で運転を取りやめたのだとか。
誰でも経験あることだとは思いますが、公衆トイレを利用した際、先に入っていた人が大便をした後にトイレに入った後の臭さというのは非常に異様で耐えられないものです。自分も大便、小便をしないといけませんから我慢せざるをえないのですが、それにしても、トイレという閉鎖された空間で他人の大便の臭いを嗅がされるというのは、いつまで経っても慣れません。
このようなことを考えると、介護現場で下の世話をしているホームヘルパーをはじめとした介護施設の人は立派だと思います。自分でトイレに行けなくなった、動けなくなった人の大便、小便をきれいに拭き取り、清潔にする行為というのは見た目以上に労力が要ります。しかも、身内ではない全くのあかの他人の下の世話をするというのは、いくら仕事だとはいってもつらい仕事なのではないかと思います。それ故、僕はもっと介護現場で働く人たちには労力に見合った報酬が出ないものかと思うのですが、介護現場に対する公的な評価が随分低く見られているように思えてなりません。
さて、歯科医院で治療をされた経験のある方はわかるとは思いますが、歯科医院においても独特のにおいがあるものです。歯科医院での治療では、非常に多くの目に見えない粉塵が舞いあがっています。歯や入れ歯の切削粉塵やセメントや印象材の粉、各種消毒液や薬品のにおいが充満しているものです。最近では空気清浄機を導入している歯科医院も多くはなってきていますが、それでも歯科医院の独特のにおいが歯科医院を敬遠させる一つの要因になっているのは事実でしょう。
ただし、長年、歯科医院で仕事をしていると歯科医院のにおいには慣れてくるというか順応してくるものです。患者さんにとっては普段臭わない異臭であったとしても、その場で長時間仕事をしている者にとってみればそれが当たり前のにおいになってしまうものなのです。
ところが、先週、うちの歯科医院では普段におわない異臭が室内を充満していたのです。
うちの歯科医院は自宅開業です。すなわち、自宅の隣に歯科医院の診療所があるわけですが、いつも僕は起床すると、歯科医院の方へ出向き、玄関のシャッターを開け、歯科医院内の各種機械類の電源スイッチをオンにしていきます。それと同時に何か異常がないか点検していくのが日課なのです。
先週のある朝のことでした。いつものように歯科医院のシャッターを開け、玄関の入り口に入るや否や、僕は“アレッ!”と感じました。何か強烈な異臭がするのです。何か野菜が腐ったかのような異臭です。歯科医院には歯科医院の独特のにおいがありますが、少なくとも野菜が腐ったかのような異臭は普段感じないものです。僕は、直ちに歯科医院内の窓を開け、換気に務めました。空気清浄機も動かしながら異臭がどこから臭うのか探っていたのです。 ところが、異臭がどこから漂うのかなかなかわかりません。
“困ったことになった!“ 僕は直ちに自宅に戻り、家族に異臭のことを話しました。
「診療所の中で野菜が腐ったような臭いが充満しているよ。」
それを聞いたお袋が即座に答えました。
「もしかしたら、そのにおいはこれじゃない?」
そう言って、お袋が台所の隣の部屋から取ってきたものを見て僕は納得しました。 それは、らっきょうでした。
「昨日、親戚の人にらっきょうをもらったんだけど、一時的に診療室と家との境目の部屋に置いたまま一晩放置してしまったのよ。今朝起きてそのことに気がつき、直ちに自宅の物置の方へ保管したんだけど、らっきょうのにおいが一晩かけて診療所の中に充満したんだね。」
らっきょうを朝早くに移動させ、異臭の元が取り除かれたこと、その後、充分に換気をしたことで診療が開始される頃にはらっきょうのにおいは完全に消えていました。後から歯科医院にやって来たスタッフにも確認し、何とからっきょうのにおいが完全に消えていることを確認。
それにしても、歯科医院の異臭の原因がらっきょうとは?後から考えれば、体に毒性のあるものではなくて良かったと思う反面、決して多くの人に好まれるにおいではないことは確か。 らっきょうのにおいが充満していた診療室内では、まともな診療が出来なかったなあと反省しきりの歯医者そうさんでした。
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