カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来
いち月の朝日が差し込む
食べ残した パンのくずや
夕べのレシートが散らばる食卓に
コーヒーの湯気がおどる
昨日をリセットできそうな 朝のひかりがまぶしくて
平凡な日常の中にいても 小さな心の高揚を
覚えて
でもそれは
ほんの一瞬のキラメキでしかなく
心が振れて 頼りげなく感じる朝は
うん なにもしなくてもいいよ
大丈夫
そのうち 黄色い水仙も眠りから覚める
地球ものんびりと回りながら
春を連れてきてくれる
通りの梅も 今日あたり
きっとひとつほころんでいる
トン トン 葉に降る雨のリズム
パチン パチン 剪定ハサミの音
雨は確かに うつむく私に降りそそぎ
黒さを増した土からは
かすかに春の匂いが 湯気となりたちのぼる
どんなに 抗おうと 足掻こうと
時のページは 静かにめくられる
カチ カチ 針はまわりつづける
私も ただここで息をするものたちと いっしょ
感謝をこめて
やわらかい恵みの雨をあびている
1月のグレイが低く空を覆う
小学校やそれぞれの暮らしが連なる街の上に
氷のような冷たく重い雲 なのに なんだか 暖かいものにつつまれているようで
もやもやの気持ちひとまとめ 雲が優しくのしかかり
湿気をふくんだ息を吹きかけ
みんな 忘れさせてくれる
とけてゆく 灰色の空の中へと どこまでも
ガラス窓のこちら側 熱い紅茶を ひとくち
なにも考えられないようになるのは
いいことでしょう?
ガラス窓から朝がやってくる
昨夜の夢などには気づかぬように カーテンが揺れて
夜明け前の舟に戻りたがる 私の背を押すよ
長い廊下のさんざめき
古い板張りの あの建物には
たくさんの笑顔やおしゃべりが取り残されていたの
私のことは誰も気にも留めず
広い草はらをてんでに走ったり 手をつないで
語り合ったり
またぐことの出来ない溝が 私の前にあり
楽しそうな彼女たちは こちらを見てはいなかった
少し さびしかったよ
握りしめた手のひらが温かい
いつの間にか 目覚めの国へむかう汽車の切符が
旅の途中 記憶のひだの奥にある場所
みんな
ここに置き去りにされたのではないのだね
安心していいんだね
私は 帰るよ また来るからね
ボタンのかけちがいって なに
大きなボタンをつければよかった
お年寄りには ファスナーより ちいさなボタンより
大きなボタンを うん うん それで大丈夫
かけちがえるって なに? っていう
わからずやさんには つとめて明るく 言いましょう
ボタン というか 心のかけちがいでしょう
そのまえに 心のカギをさがしてみましょう
穏やかな あたたかな心を 今年も探しましょう
冬型の 気圧配置のこの頃だから
よけいにボタンは きちっとかけておかないと
それが多少 だんだん違いになってても
natu
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