カゼノトオリミチ
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夕暮れの風は 日ごとに 透き通り
ベランダで 耳を澄ますよ
キミの声が 聞こえてこないか 風の色に ちぎれた会話の断片が
コトバの切れ端が 言葉のリズムの 一拍が まざっていないかと
耳を澄ますよ
気づけば 陽は落ちて 秋の薄絹の裾が 音もなく ワタシの背中に近付いていた
結んだ手の指から 捉まえたはずの ユメのかけらを はらり 落して 吹きすぎる 風
8月の日めくりは いったい何枚あるのだろう
夕べ眼を閉じて 朝 眼を開けるとそこには また新しい1日が きちんと笑ってる
もう 何度も朝を迎えました でも 8月は終わらない
風は 朝が来るたび 透き通ってゆく
残り少なくなったはずの 日めくりが パラパラと 焦ったように 身を揺するけれど
不思議と 8月は終わらない
何度目覚めても また今日も 8月の朝がそこにいる
しめった分厚いてのひらの 血管のおくから とおめいな風が ひとすじ ふたすじ 流れはじめて
水面に輝く キラキラの膜の下に 音もなく たゆたうものが 白い肌から染み出して
この夕暮れに秋が生まれる 庭の木陰の奥で あなたのまつ毛の先で ひっそり
ラベンダ色の街をさまよう 犬と私 空は茜 道には 炭色が流れはじめて
帰り道がもう わからなくなりそうで ひと ひとり ひとりが ゆうらり 歩いてゆく ふらふらと
みんな ひとりを生きている そんなふうに あきらめて タメイキ してみる
秋風に たゆとおてみよう 夕暮れに 白い肌が浮かんでいる うす紫を まとっている
今日の朝
つと 席を立つ
飲みかけのコップは 汗をかき
洗い桶に 皿や箸が
放り込まれたまま
薄手のカーディガン羽織り
電車に乗っている
カタンコトン
乾いた線路の音
夏休みの私鉄は
色んな人が乗っているから
誰も気にしない
携帯画面で
張り巡らされた地下鉄路線図を
目でなぞる
このまま地下へすべり込み
何処へでも行ける
何処へ行こう
街中は悲しい
公園も寂しい
デパートも
駅ビルも
ただただ
水族館ならどうだろう
薄暗い通路をはさんだ
ガラスの前で
足のすくむまで
サカナを眺めるのはどうだろう
natu
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